人財育成方針の中心に“経験学習”がある理由
永田 お話しいただいた人財育成の全体像のなかに、新人育成において取り入れられている「エルダー制度」も入っているのですね。
茂木 はい。OJT制度の一環として、エルダー制度を採用しています。新入社員1人に対し、1名の、年齢が近い先輩が「エルダー」としてつき、育成と指導を行っています。それをさらにまとめる役割を、OJTリーダーが担っています。
永田 これまでに私は、御社のエルダー向けハンドブック作成のために教え上手のエルダーの方などにインタビューをさせていただいたのですが、皆さん、「経験学習」をとても意識されていると感じました。営業職においてはロールプレイングを積極的にされ、必ず振り返りをしている点もそうですし、新入社員に業務を行わせた後にきちんとフィードバックもしていますね。エルダー制度にも、経験学習を回す仕組みができていると感じています。経験学習を人財育成方針の中心にされたのは、どのような理由からなのでしょうか?
茂木 社会的な変化、医療業界の技術の進展など、急速に変わってきたことが大きいと感じています。従来の育成方法ではなかなか機能しなくなってきたことと、また、スキルの面でも個人によってばらつきがあり、そのばらつきをなくすためにOJTリーダー制度を導入し、育成の連鎖がきちんと続くようにしたいと考えました。
永田 経験させているだけでは、なかなか育っていかないということだったのですね。

茂木 そうです。たとえば、営業職なら、医療機器のモニターを売るためにその使い方を学ぶのですが、そこは一生懸命にやっても、「なぜ、学ばなくてはいけないのか?」「どうやったら、早く学べるのか?」というような部分が抜け落ちてしまっていて、時間がかかったり、学びが定着しなかったり、といったことがありました。
永田「なぜ、学ばなくてはいけないのか?」という「仕事の意味づけ」を、エルダーやOJTリーダーが伝えることも大切なのですね。
茂木 はい。さらに、中期的な視点で育成をすることも重要だと考えています。これができると、次はこんなことができる、そして、こんな影響力を持つことができて、こんなふうにお客様に貢献できるというように、将来を想像しながら現在の仕事ができるとよいと思っています。
永田 私がお話をうかがったエルダーやOJTリーダーも、「仕事の意味づけ」を重視している方が多かったです。新入社員の将来のキャリア像をしっかり聞いてから、それと紐づけて仕事をさせるという方が数名いらして、とても良い育成の進め方だなと思いました。