現在は、イネの品種改良の技術が進んで、300種を超えるようなイネの品種がある。

 しかし、実際には特定のイネから作り出された似たり寄ったりの品種ばかりだ。

 米の売り場にはさまざまな銘柄が並んでいるように見えても、まるで、個性はないというのが実際のところだ。

 それでは、米はどのように評価されるのだろう。

 じつは、お米も見た目で評価される。

 米には、一等米とか、二等米という言い方がある。

 一等米は高級なお米という感じがするが、実際には見た目の悪いお米が少ないということでしかない。もちろん、しっかり熟していなかったり、害虫の被害があったりすると、見た目の悪いお米が増えるから、見た目がきれいにそろいやすいということは、それだけ栽培しやすい「良い品種」ということになるだろう。

プロが評価した“おいしいお米”を
学生たちが選ばなかった理由

 最近では、おいしいお米が求められているから、さすがに見た目だけで評価するのは物足りない。

 そこで、最近では「米の味」で評価するようになった。

 色々な指標があるが、もっとも評価されるのは「たんぱく質の少なさ」だ。そして、計算式によって、米の味が得点化されるのだ。

 しかし、この得点だけでは、米の味を評価することはできない。そこで、結局、人間が実際に食べて米の味を評価する。そして、計算によって算出された得点と、人間のつけた得点によっておいしいお米が評価されるのだ。

 こうして、さまざまな工夫によって米の味は評価される。客観的に評価することは、それくらい難しい。

 米の味は訓練されたプロによって評価される。

 一般においしいとされる米は、甘味が強く、しっかりした強い味わいの米だ。おにぎりにすれば最高においしいし、いわゆる「米をおかずにして、米を食べる」ことができる米。これがおいしい米である。

 ところが、である。

「美味しい米」の評価が専門家と若者でまるで違うワケ【農学博士が解説】『遺伝子はなぜ不公平なのか?』(稲垣栄洋、朝日新聞出版)

 私がいくつかの米の食べ比べを学生たちにさせたときのことである。どのお米がおいしいか選ばせると、学生たちは私が用意した「おいしい米」を選ばなかった。それどころか、学生たちが選んだのは、私が用意した「おいしくない米」だったのである。

 どうして、こんなことが起こったのだろうか?

 おそらくだが、学生たちは日頃、味の濃いおかずを食べている。そのため、おかずの味を邪魔しない、味の薄いあっさりした米を選んだのではないだろうか。

 理由はともかく、プロの目で「おいしい米」と評価された米が、必ずしも「おいしい」と評価されるわけではなかった。「おいしい米」は絶対的なものではなかったのである。