狙え!不動産リッチ企業#11Photo:PIXTA, South_agency/gettyimages

PBRが低く割安な傾向にあるのが、不動産含み益を多く抱える不動産リッチ企業だ。実は、不動産含み益を反映した修正PBRを算出すると、見た目のPBRよりも割安であることが分かる。特集『狙え!不動産リッチ企業』#11では、海運業界の7社を対象に、不動産含み益を反映した修正PBRが低い上場企業ランキングを作成した。(ダイヤモンド編集部 田中唯翔)

海運7社のランキング
修正PBRで分かった“格安銘柄”は?

 PBR(株価純資産倍率)は、投資の際に割安度を測る指標として用いられる。PBRが低いほど、分母の純資産に対して分子の株価が低く評価されていることを示し、一般的に割安と判断される。

 PBRが低く割安に放置されがちなのが、不動産含み益(賃貸等不動産の時価と簿価の差額)を多く抱える不動産リッチ企業だ。不動産含み益のある企業は、不動産含み益のない企業と比較してPBRやROE(自己資本利益率)が低い傾向にある(本特集#3『不動産含み益を反映した「修正PBR」が低い“割安”上場企業ランキング!2位にフジ・メディア・HD、1位は?』参照)。

 また、不動産リッチ企業は見た目のPBR以上に割安とみるべきだろう。PBRの算出過程において、不動産含み益は反映されないからだ。足元では海外投資家の注目が賃貸等不動産に集まる中、不動産含み益を反映した修正PBRのチェックは不可欠だ。

 そこで、岡三証券の内山大輔シニアストラテジストの計算式に沿って、実効税率30%課税後の不動産含み益を反映した修正PBRを算出。本稿では、海運業界の修正PBRが低い上場企業ランキングを作成した。

 新型コロナウイルスの感染拡大によりに発生したコンテナ船の運賃高騰で、未曽有の利益を上げた日本郵船、商船三井、川崎汽船の海運大手3社をはじめ、海運業界は「高配当株」として知られている。高配当であることに加えて、海運会社の多くはPBR1倍割れであり、株価も割安だ。

 そして、古い歴史を持つ名門企業が多い海運業界では、戦前から保有していた土地や建物を活用し、不動産ビジネスを手掛けている会社も存在する。

 その一例が飯野海運だ。東京・内幸町の飯野ビルディングや日比谷フォートタワーなど、東京都心部でオフィス賃貸事業を展開している。同社の2025年3月期第3四半期決算によると、不動産業の営業利益は営業利益全体の18.8%を占めている。

 不動産事業に取り組むのは飯野海運に限らず、他の海運会社も同様だ。

 そのため、不動産含み益を考慮すれば、海運銘柄はいっそう割安度合いが高まることが確実だ。不動産の含み益はバランスシートに顕在化しないため、どの海運会社が真に割安な銘柄であるかを見極める判断材料となる。

 では、海運業界の7社の中で、修正PBRが低い割安な不動産リッチ企業はどこか。次ページで一挙に公開する。