
PBRが低く割安な傾向にあるのが、不動産含み益を多く抱える不動産リッチ企業だ。実は、不動産含み益を反映した修正PBRを算出すると、見た目のPBRよりも割安であることが分かる。特集『狙え!不動産リッチ企業』#17では、建設業界の70社を対象に、不動産含み益を反映した修正PBRが低い上場企業ランキングをお届けする。(ダイヤモンド編集部 田中唯翔)
建設業界の70社をランキング
修正PBRで分かった“格安銘柄”は?
PBR(株価純資産倍率)は、投資の際に割安度を測る指標として用いられる。PBRが低いほど、分母の純資産に対して分子の株価が低く評価されていることを示し、一般的に割安と判断される。
PBRが低く割安に放置されがちなのが、不動産含み益(賃貸等不動産の時価と簿価の差額)を多く抱える不動産リッチ企業だ。不動産含み益のある企業は、不動産含み益のない企業と比較してPBRやROE(自己資本利益率)が低い傾向にある(本特集#3『不動産含み益を反映した「修正PBR」が低い“割安”上場企業ランキング!2位にフジ・メディア・HD、1位は?』参照)。
また、不動産リッチ企業は見た目のPBR以上に割安とみるべきだろう。PBRの算出過程において、不動産含み益は反映されないからだ。足元では海外投資家の注目が賃貸等不動産に集まる中、不動産含み益を反映した修正PBRのチェックは不可欠だ。
そこで、岡三証券の内山大輔シニアストラテジストの計算式に沿って、実効税率30%課税後の不動産含み益を反映した修正PBRを算出。本稿では、建設業界の修正PBRが低い上場企業ランキングを作成した。
建設業界にはPBR1倍割れ企業が目立ち、昨今はアクティビストの標的になる企業も多い。
米投資ファンドのダルトン・インベストメンツが、戸田建設の株式を保有しているのがその一例だ。2024年4月23日にダルトンは戸田建設に対し、「株主還元の拡充および資本効率の向上」を目的として自社株買いを要求する提案を行った。
ダルトンが指摘した通り、同社のPBRは0.85倍と解散価値を下回る。不動産含み益は時価総額の26.5%に相当する823億円で、含み益を考慮した修正PBRは0.73倍まで低下する。この計算によれば、戸田建設は割安な“不動産リッチ企業”であることが分かる。
とはいえ、建設会社が不動産を保有しているケースは戸田建設だけではない。同社よりもさらに割安な不動産リッチな建設会社が存在している。
では、建設業界の70社の中で、修正PBRが低い割安な不動産リッチ企業はどこか。次ページで一挙に公開する。