停戦後もロシア線再開は困難なワケ
羽田の発着枠は他国へ再配分すべき
トランプ大統領とプーチン大統領の電話会談で、遠くない将来、ウクライナ戦争が停戦する可能性も出てきた。しかし、筆者は羽田空港のロシア枠は他国への再配分を検討すべきと考える。
理由の一つ目は、正規の部品供給が数年に渡りまともにできていないロシアの航空会社は、安全面で大いに不安が残るからだ。日本への乗り入れがすぐに許可されるかは不透明である。
二つ目は、リース借りパク問題だ。国際社会は簡単に許してはいけないだろう。
三つ目は、日本人渡航者の心理状況だ。停戦したからといって旅行需要がそう簡単に元に戻るだろうか。つまり、日本~ロシア間の直行便を出せるほど移動需要が復活するとは思えない。
ロシア側からしても、リース問題の賠償金支払いや、航空業界の立て直しに膨大な費用がかかる可能性がある。優先順位がそれほど高くないであろう日本路線復活にかける余力があるかは疑問だ。
ロシア枠4枠は、停戦後もしばらく放置される可能性が高い。首都・東京の玄関口であり、発着枠が限られる羽田の国際線は、有効活用できなければ相当な国益の損失になりかねない。ロシアのせいで4枠も未使用のままというのは、この枠が欲しくて仕方ない他国も納得できないだろう。
このままでは貴重な羽田枠に、凄まじい無駄が出てしまいかねない。再配分したほうが、利用者の利便にかなっている。
ただし、既存の成田路線からの移管で、再配分枠を埋めてしまってはもったいない。そこで、現時点で日本に就航していない都市や航空会社が利用できる枠として設定すべきではないだろうか。
例えば、欧州最大の日本人居住地でかつて成田路線が存在したドイツのデュッセルドルフ、日本人観光客や出張客も多かった米ラスベガスなどの路線を開設すれば、羽田枠の有効活用とネットワーク拡大を両立できるだろう。また、25年にはサウジアラビアで新しい航空会社が誕生する計画もある。
日本の航空業界は規制やしがらみが多い。国民の利益を追求しているのか、もっと厳しく見られて然るべきだ。ロシア枠をきっかけに、オークション導入の議論が再び活発化してもいいだろう。また、国際線の深夜枠や、国内線の発着枠政策コンテストなど羽田空港にわずかに残る発着枠の配分も気にかけたい。議論が深まることを、航空ファンとして切に願う。
・「空路の地政学 ウクライナ侵攻の領空相互閉鎖」中日新聞
・「How Russian Airlines Have Been Able to Skirt Sanctions and Keep Flying」Jemery Bogaisky,Forbes,March 24,2023 (日本語訳:溝口慈子「制裁下のロシア航空会社、闇市場で部品調達も5年後はフライト不能に」Forbes Japan 2023年3月27日 )
・「イラン経済制裁が生んだ「命がけの」老朽旅客機」フェリシティ・ケーポン、ニューズウィーク日本版、2015年7月17日
・「ロシアへのリース航空機、返ってこない恐れ…欧米各社の機体「接収」の動きに対抗」読売新聞 2022年3月22日
・「アエロフロートが保有していたヒースロー空港のスロットがチャイナエアラインなど6社に再配分」skybudget 2022年7月3日