思ったよりも慎重だった!?米中の「関税」合戦
メキシコ、カナダ、中国に対する関税発表の後、トランプ氏は3カ国の首脳と協議する意向を示した。交渉の結果、相手国から満足のいく提案が得られれば、関税引き上げの実行に猶予期間を設ける考えを持っているという。
その時点で、トランプ氏は関税を取引(ディール)の手段として使う姿勢が明らかだ。実際、トランプ氏はメキシコとカナダの首脳と協議した。両国が国境管理を強化する見返りに、25%の関税の発動を遅らせた。
トランプ氏は、中国の習主席とも協議を持つ意向だったようだ。しかし、関税発効前の米中首脳会談は開かれなかった。中国側のプライドが、即時の会談を許さなかったのだろうか。トランプ氏は習氏との協議を急ぐ必要はないとして、予定通り10%の追加関税を実施した。
それに対抗して2月4日、中国政府は米国産石炭とトランプ大統領が増産を主張する液化天然ガス(LNG)に15%、原油、農業機械、大型自動車に10%の追加関税を課すと発表した。ただしこの中国側の対抗措置は、拍子抜けするほどその効果は小さいだろう。
この米中のやりとりを見る限り、双方は過度に対立が高まらないよう慎重に動いたようだ。米国は、大統領就任当日の対中関税の実施は見送った。追加関税の理由も、どちらかといえばメキシコとの関連性が強い合成麻薬と不法移民にとどめている。
トランプ大統領は、中国政府との距離感を測ろうとしているのかもしれない。あるいは、中国にいきなり高関税をかけ、テスラなど米企業の中国事業に悪影響が及ぶのを避ける狙いもありそうだ。
中国の対米報復関税も控えめなものだ。10日に中国が関税を課した80品目は、対米輸入全体の8.5%を占める。初動は激しくせずに、米国との対話の余地を確保しようとしているとみられる。
米中双方が慎重に対応したことで、2月4日、5日と米国の株価は上昇した。世界の主要投資家に、米中貿易戦争の激化が避けられるかもしれないといった楽観を与えたのだろう。2018年3月に米国が対中関税を発動し世界的に株価が下落したのと対照的だった。