近年、就活市場で人気が高まるコンサル業界。採用試験に臨む就活生や転職者から大きな支持を集める本がある。『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』だ。大手コンサルティングファームで出題された入社試験を取り上げ、実践的な問題解決思考をトレーニングする1冊だ。本稿では本書から一部を抜粋・編集して「ケース面接の例題と解答例」を紹介する。

超人気企業から内定連発の学生は「面接で何を話しているのか?」Photo: Adobe Stock

「問題解決の思考力」を測る入社試験

 ケース面接はコンサルティングファームの入社試験で必ず出題されるタイプの面接で、「問題解決の思考力」を測るためのものです。

 面接官からは、企業や政府・自治体が抱える問題を提示され、あなたはこの問題を解決する打ち手を検討していきます。

 次の回答のステップを頭に入れて、ケース面接問題に取り組むことで、問題解決において最も重要な「論点を設定して仮説を立てながら思考する力」が身につきます。

 では、次のケース面接問題に挑戦してみましょう。

実際のコンサルの入社試験に挑戦!

面接官:
「先進国から発展途上国に提供される医薬品を、市民に行き渡らせる方法を考えてください」

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【回答のヒント】

・医薬品が市民に行き渡りづらくなっている原因を洗い出してみましょう。

・思いついた原因を深掘りし、本質的な課題は何か考えてみましょう。

・本質的な課題について、その解決につながる打ち手を検討しましょう。

回答のポイント:発展途上国に医薬品が行き渡りづらい本質的な課題を見出す
想定される原因を深掘りして本質的な課題を見出し、優先度の高い施策を提案しましょう。

 以下が解答例です。

医薬品が市民に行き渡りづらくなっている原因を洗い出す

 医薬品を市民にうまく行き渡らせることができていない発展途上国の政府をクライアントと想定し、打ち手を検討します。

 まず、医薬品が市民に行き渡らない原因について、先進国より医薬品が届けられてから市民に行き渡るまでの流れを整理すると、

①先進国から寄付された医薬品が発展途上国内の物流に乗るまで
②医薬品が物流に乗ってから市民に届くまで
③医薬品が市民に届いてから正しく服用されるまで

 の3つの段階があり、それぞれにおいて、医薬品が市民に行き渡らない原因が発生しうると考えらます。

 ①先進国から寄付された医薬品が物流に乗るまでについては、発展途上国の政府が先進国から医薬品を受け取ってから物流に乗せていると考えられるため、途上国のオペレーションに原因がある可能性があります。

 したがって、「仕組み面(ハード)」「運用面(ソフト)」の2つの観点でオペレーションにおける原因を洗い出します。

 ②医薬品が物流に乗ってから市民に届くまでについては、「物流業者の原因(人為的な原因)」と、「物流業者に依らない共通の原因(自然的な原因)」の2つの観点で原因を分けることができます。

 ③医薬品が市民に届いてから服用されるまでについては、市民の意識や行動が原因となって服用に至っていないことが考えられるため、「認知(薬について知っているか)」「意欲(薬を服用したいと思っているか)」「行動(薬を正しく服用できているか)」の3つの観点で原因を整理します。

 以上を踏まえて、私は次のように「医薬品が市民に行き渡らない原因」を洗い出してみました。

超人気企業から内定連発の学生は「面接で何を話しているのか?」思い付きで施策を提案するのではなく、情報を整理し、面接官と議論の前提を共有する

本質的な課題を捉え、打ち手の方向性を検討する

 ここで、医薬品を市民に行き渡らせるにあたり、そもそも市民のもとまで薬が届かないのであれば服用できませ(①先進国から寄付された医薬品が物流に乗るまで、②医薬品が物流に乗ってから市民に届くまでの原因が本質的な課題)

 したがって、医薬品を適切に物流網に乗せ、市民のもとに確実に運搬するための打ち手が第一に必要と言えます。

 第二に、市民に医薬品が届いたとしても、市民が医薬品の存在を認知していない、または服用したいと思っていない場合には、国全体における医薬品服用の普及は難しいです(③医薬品が市民に届いてから服用されるまでの原因については認知や意欲が本質的な課題)

 したがって、市民の医薬品に関する認知度や服用意欲を上げるための打ち手も講じていく必要があります。

本質的な課題に対する打ち手を具体化する

 今回検討した国は発展途上国であるため、国民全員の居住地を把握する仕組みが確立されていなかったり、大量の医薬品を管理するノウハウが不足していたりする可能性があります。

 このことが、先ほどのロジックツリーでをつけた原因に横断的に影響していると想定されます。

 そこで、まずは「医薬品を重点的に届けていく地域」を選定し、政府が管理可能な規模に限定して政府主体で医薬品の提供を行うことで、他の地域にも応用できる医薬品の提供ノウハウを蓄えていくことが有効と考えます。

 また、政府にノウハウが蓄積されると同時に、政府主導で積極的に医薬品が提供されることで、市民の服薬意欲向上が期待できます。

 その上で、この「医薬品を重点的に届けていく地域」の選定に際しては、「適切な運搬を行えるインフラが既に整備されていること」と「医薬品の存在や効果を国民に認知・共感させるインパクトがあること」の2点を重視すると効果をあげやすいと思います。

 具体的には、交通インフラが整備されていることに加えて、人口やメディアの集中でスケールメリットも享受しやすい「首都地域」を重点地域とすべきでしょう。

 したがって、私は、発展途上国の政府がまず行うべき打ち手として、

「発展途上国の首都地域に特化」して「政府主体で医薬品の運搬及び提供を行う」ことで、「運搬ノウハウの確立」と国民の「服用意欲向上」を図る

 ことを提案します。以上となります。ありがとうございました。

面接官からの質問に答える

──打ち手について、特に障壁になる点はどこになります?

 国民の服用意欲を向上させることが、特に難しいと考えています。

 思考時間内では検討できませんでしたが、日本でコロナワクチン接種者をGoToトラベルの対象にしたように、提案した打ち手においても、医薬品を服用した市民に対するインセンティブの設計を別途考えていく必要があると思います。

──今回の打ち手において、政府が主体となって輸送を行うとは、具体的にどのようなアクションを想定していますか?

 日本において、非常時に自衛隊が物資を地域に届けるように、検討した発展途上国の軍隊や警察が有する機材・車体などで物資を輸送することを想定しています。

 また、先進国が発展途上国に医薬品を提供していると想定すれば、発展途上国の政府から先進国(支援国)に輸送用車両などの提供を要請することも有効と考えられます。

──打ち手の対象を首都地域に絞って立案していただきましたが、それでは国内に広く医薬品を運搬するためのノウハウが蓄積されないのではないでしょうか?

 私は、輸送中に起こる自然的な問題には「国の気候の問題」や「道路の舗装状況」があると整理しました。

 前者については、首都への運搬でも十分に検証できると考えられます。

 また、後者については、長期的なインフラ整備となると莫大な時間と費用が必要になるため、ヘリやドローンなどの異なる輸送手段を用いることが有効になるでしょう。

 そうした輸送手段であれば首都地域への医薬品輸送の際に試行することも可能と想定しています。

(本稿は『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』から一部を抜粋・編集したものです)