今、学生や転職者から最も人気の就職先の一つがコンサルティング業界だ。数多くの志望者の中から、一握りの有望な人材を見抜くために、この業界にはフェルミ推定やケース面接と呼ばれる独特の入社試験がある。新刊『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』は、大手コンサルティングファームで実際に出題された問題を集め、現役で活躍するコンサルタントに解答してもらうことで、コンサル流の思考法をノウハウとして凝縮した1冊だ。就活対策にはもちろんのこと、思考力のトレーニングにも最適だ。本稿では、本書執筆者の1人である現役コンサルタントのTACT氏に、ケース面接の対策方法について話を聞いた。

倍率は100倍超、人気外資コンサルから内定が出る就活生は面接で何を話しているのか?『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』より

ケース面接を6回実施するコンサルティングファームも

――なぜコンサルティングファームの選考では、フェルミ推定やケース面接が実施されるのでしょうか?

TACT氏:一番手っ取り早く、志望者の思考力を試すために、この形式の面接が行われます。

 例えば、一人あたり数十分の面接で、志望者の人柄を見極めようとしても、実際にはどんな人なのかよくわからないことも少なくありません。

 また、コンサルの面接では、面接官であるコンサルタントが忙しいこともあって、悠長に一人ひとりの志望者の人柄をじっくり見ている時間はありません。

 そこで、実際のプロジェクトで活躍できるだけの思考力があるかどうかを効率的に測るために、このような試験を課しています。

――即戦力かどうかが問われているのですね。

TACT氏:そうです。面接官はコンサルタントですので、「この人なら、同じチームで一緒に働けるだろう」と思えば次の面接に進めますし、「一緒に働くのは難しい」と思われたら、選考を突破することはできません。

 ちなみに私が戦略コンサルティングファームから内定をもらった際は、一社の選考でケース面接を5回以上はやりました。

 そして、その後の最終面接で執行役員クラスの人が出てきて、パーソナリティも見られる一般的な面接を行い、内定となりました。

コンサルの基本は、情報を速やかに整理すること

――ケース面接を攻略するためには、どのような対策が必要ですか?

TACT氏:総合コンサルティングファームを志望している人は、とにかく基礎を固めることが最優先です。

 最近はコンサルティング業界全体として採用人数はかなり増えていますが、依然として採用枠に対して応募者がかなり多いので、採用側からしたら、テキパキと志望者の思考力を測っていかなければならないのが実状です。

 ですので、基礎的な思考力が不足していると評価されてしまうと、その時点でふるいにかけられてしまいます。

――基礎的な思考力とはどのようなことを指していますか?

TACT氏:いわゆるロジカルシンキングになるのですが、もう少し具体的に言い換えると「情報を整理する力」です。

 コンサル業界では、コンサルタントがお客様に提供する価値を「バリュー」と呼ぶのですが、このバリューの大部分は「情報を整理する力」と言われています。

 この本では、ロジックツリーや3C分析、4P分析のようなフレームワークの使い方を紹介していますが、このようなフレームワークをいつでも使えるツールとして持っておきながら、与えられた問題に応じて、自在にフレームワークを使い分けて情報を素早く適切に整理することが重要です。

 この本は、フェルミ推定問題とケース面接問題の2つのパートに分かれています。フェルミ推定問題を一通り押さえれば、情報を整理する力が身につくように色々なパターンの問題を用意しました。

 さらに、問題の回答例に関しては、コンサルタントから見て違和感のない、正統派で基本的な解き方を紹介しています。

 これから選考の対策を始めたいという方は、まずはこの本のフェルミ推定問題を解いて、ロジカルシンキングの基礎を固めてみてはいかがでしょうか。

ロジカルシンキングは、目の前の相手から信頼を得るためのスキル

TACT氏:ここまでコンサルタントの目線で話してきましたが、ロジカルシンキングはどんな仕事においても重要なスキルなのではないでしょうか

 ロジカルシンキングがなぜ重要かと言えば、信頼を勝ち取るための手段だからです。

 たとえば、仕事相手の発言が話すたびにコロコロ変わっていたら、「この人とは仕事をしたくない」と思いませんか。

 発言が二転三転する人は、その場その場で思いつきで発言してしまっているわけですが、そうならないためには、事前に自分の頭の中で情報を整理できている必要があります。

 話す内容に筋が通っていて、一貫性がある人に仕事を任せたいと思うのは、どんな仕事でも共通することですよね。

 情報を整理して、ロジックを組み立てて説明する習慣をつけたい人は、フェルミ推定問題やケース面接問題でトレーニングするのが非常に効果的だと思います。

戦略コンサルから内定がもらえる人の共通点

――先ほど、総合コンサルを志望する人にとっての対策法を話していただきましたが、戦略コンサルを目指す人にはどのような対策が必要ですか?

TACT氏:戦略コンサルの選考を突破したいとなると、採用枠がさらに限られてくるので、基本的なロジカルシンキングは大前提として、他の志望者との差別化が必要になってきます。

 例えば、あるBCGで働く友人の場合は、ロジカルシンキングがずば抜けて強いことが他の志望者との差別化になりました。他の人が2階層のロジックツリーを描いている間に、精密な4階層のロジックツリーを描いて情報をまとめることができました。

 私が就活をしていた際は、彼のようなロジカルシンキングの強さで他者との違いをアピールすることはできなかったので、ロジカルシンキングの基礎を固めたうえで、発想力をアピールすることを意識していました。

 日頃から、街を歩いている時に、街並みを観察することが好きだったこともあり、観察したことをストックしておいたんです。

 例えば「なぜこのチェーン店は、この立地に出店しているんだろう」「あのお店は最近人気だけど、どういったお客さんが入っているんだろう」といったことをよく考えていました。

 こうした観察を、目にしたニュースや新しく使うサービスなど、様々な分野でも行うように心掛け、ケース面接で回答を組み立てる際に、ストックしていることを紐づけて面接官にプレゼンするという感じです。私の場合は、そういう戦い方で選考を突破しました。

 採用人数が限られている戦略コンサルの場合は、論理的思考力を前提としたうえで、プラスなにか武器を見せなければいけないと思います。

コンサルティングファームの採用の方向性

TACT氏:実は、近年コンサル業界が目指している方向性の中で、「人材の多様性」が1つのキーワードとなっています。

 色々な強みを持つコンサルタントを抱えることで、プロジェクトに合ったコンサルタントを割り当てることができるからです。

 コンサルと聞くと、バリバリ仕事をするワーカホリックな人間というイメージを持っている人は多いと思います。そういう人も一定数必要かもしれませんが、実際には全員がそういうわけではありません。

 ですので、面接の前には、「自分は何が得意で、どのように面接官にアピールできるか」ということを一度考えておくといいと思います。

「コンサルにはこんな人が求められるんじゃないか」と考えて、面接で偽りの自分を作り上げても、それは多様性と逆行し、他の志望者と差別化できずに埋もれてしまうことにもなりかねません。

 基礎的な論理思考を身につけ、その上に自分らしい何か1つ強みを乗せて、ケース面接の中で面接官にアピールしていくことが、今のコンサルティングファームの選考を突破するために重要なことだと思います。