実際には、職場環境や福利厚生への不安や、内定はもらったもののやりたい仕事ではないなどが、主な内定辞退の理由。学生の本音と企業の認識にズレが生じているのだ。
「本当に親に反対されて辞退する就活生もゼロではないと思いますが、多数派ではないでしょう。なので私は、企業側から『オヤカクはすべきか?』と問われたら『必要ない』と答えています」
売り手市場の就活生が
抱えてる「悩み」とは
人手不足が深刻化し、新卒学生は空前の売り手市場にある。そのため企業は内定辞退防止策として「オヤカク」を実施するようになった。そんな時代にあっても、学生たちは就活に恐怖心を抱いているという。
「彼らが恐怖心を抱いているのには、就活の早期化が大きく影響しています。現在、政府は大学4年生の6月1日以降に企業の採用活動をスタートするようにルールを定めています。しかし、いち早く優秀な学生を囲い込みたい企業は、大学3年生の4月に“夏のインターンシップに申し込ませ、インターン参加者を早期選考で早く内定を出す”という形で採用活動をスタートさせているんです。かつては大学3年生の6月からインターンシップが解禁され、就活解禁の3月まで徐々に就活モードに入れたのですが、今は就活がどういうものなのかわかっていない3年生の序盤から、就活をはじめなければなりません」
10年以上前の就活市場におけるインターンシップは、一部の企業が選考と関係なく実施し、希望する学生が参加するものだった。しかし、近年のインターンシップは選考にも絡むため、学生にとって重要な就職活動のひとつとなっている。
「夏のインターンシップそのものが採用・不採用に影響するものではありませんが、参加者は早期選考にエントリーできるのが特徴です。そこで学生は3年の6月までに名の知れた大手企業のインターンシップに応募しますが、大半が不採用を突きつけられて挫折を味わってしまうのです」
さらに、SNSを開けばインターンシップに合格し、充実した毎日を過ごす友人の投稿が目に入る。これまで羽田氏は、就活が順調に進んでいる友人と自分を比較して、落ち込む学生を多く見てきたという。
「就職氷河期を過ごしてきた中高年代からすれば、今の学生は引く手あまた、と感じるかもしれません。実際にそのはずなのですが、当の学生たちは『インターンに受からなかった自分は落ちこぼれだ』と感じています。中高年代のビジネスパーソンが経験した就職難とは異なる悩みを抱えているんです」
就活の早期化やSNSの普及は、学生の意欲を削ぐ要因にもなっているのだ。