「あなたは人生というゲームのルールを知っていますか?」――そう語るのは、人気著者の山口周さん。20年以上コンサルティング業界に身を置き、そこで企業に対して使ってきた経営戦略を、意識的に自身の人生にも応用してきました。その内容をまとめたのが、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』。「仕事ばかりでプライベートが悲惨な状態…」「40代で中年の危機にぶつかった…」「自分には欠点だらけで自分に自信が持てない…」こうした人生のさまざまな問題に「経営学」で合理的に答えを出す、まったく新しい生き方の本です。この記事では、本書より一部を抜粋・編集します。
「短期の合理の罠」に陥っていないか?
私たち日本の社会では、大学在学中に企業の内定を取り、卒業と同時に名のある組織に入って働き始めるのが「勝ち組」とされています。在学中に内定がもらえない、卒業してから働く口がないというのは、一般に「就活の敗け組」とされ、無為に時間を過ごしてしまうことは、それこそ「非合理的だ」と考えられています。
しかし、本当にそうなのでしょうか? むしろ、さしたる人生経験もなく、企業や産業を評価するリテラシーもないままに、下手をすれば一生いることになる企業を「新卒一括採用」と呼ばれる、世界でも類例のない奇怪な制度に依存して選んでしまうことの方が、よほど非合理的だという考え方もできるでしょう。
私たちは「自分がどのような活動に夢中になるのか」、「どのようなことが他人より得意なのか」を、先見的に知ることができません。
その人が最もその人らしい個性を発揮して活躍できる場所を、先見的に知ることができないのであれば、色々と試してみて結果を検証するというアプローチは非合理的どころか、逆に極めて合理的だと言えないでしょうか? ところが「長期計画のロジック」が見えていない人からすると、同じ行動を目にしてもその意味するところがわからず、場合によっては、そのような行動は叱責や批判の対象になってしまうのです。
平均的な寿命を前提にすれば、私たちの「人生というプロジェクト」は80年にわたって展開される超長期のものとなります。このような長期の営みを「短期の合理」に歪められて繰り返していれば、本書で設定した「持続的なウェルビーイングを実現する」という目標の達成はおぼつかないでしょう。
ライフ・サイクル・カーブの全体像をイメージして、人生という超長期のプロジェクトのゲームプランを俯瞰的に描くことで、世間で言われる「短期の非合理」に流されずに、自信と忍耐を持って日々のプロジェクトを推進することができるのです。
この「長期の合理」「短期の合理」という視点を持てるかどうかが、長期の人生においてはとても重要なのです。