就活生をスカウトする企業
現代の就活生は“受け身”に

「オヤカク」に加えて、近年の就活で目立つのが「受け身の就活スタイル」だと、羽田氏は危惧する。

 受け身の就活とは、専用のサービスやSNSを介して企業が学生を直接スカウトする採用方法だ。中途採用で定着している「ダイレクトリクルーティング」「人材紹介」が、新卒採用にも取り入れられているという。

「中途採用の場合は個人のスキルやキャリアを考慮してスカウトできますが、基本のスキルがない学生に適している手法とはいい難いです。受け身の就活生は、興味がある企業の情報ならば自ら調べますが、それ以外は自ら動かず、紹介された企業の選考を受け、内定を得るケースも珍しくありません」

 そうして内定が出ても「本人と企業にとってあまり良い結果にはつながらない」と羽田氏は語る。

「受け身の就活生は業界研究や企業研究を行っていません。そのため、いざ入社が迫ったときに違和感を抱いて『親の反対』を理由に内定を辞退したり『オヤカク』を経て入社したとしても、社風や業務内容のミスマッチに悩んで離職を選択する新入社員もいるでしょう。彼らは自分の言葉で退職の意向を伝えるのが苦手なので、退職代行を通して離職する人もいるでしょうね」

 オヤカクをはじめ、就活の早期化や新卒社員の退職代行の利用増加など、それらは深く関わりがないように思える事象だが、すべて就活の変化によって生じた“歪み”とも言える。

「企業や学生が抱える課題を解決するにはキャリア教育を根底から変える必要がありますが、長い時間を要します。今できることは、まず企業は『オヤカク』に割いている時間や労力を別の方向に向け、就活生は受け身の就活を脱却する。そして、大学生の子を持つ親御さんは、自分の時代の就活とはまったく別物と捉えて、我が子の選択を信じて見守ってあげてください」

 大きな転換期を迎えている就職市場。企業と学生の模索は続きそうだ。

<プロフィール>
羽田啓一郎
株式会社Strobolights代表 立命館大学産業社会学部客員教授
2003年立命館大学卒業後、マイナビに入社。企業の新卒採用のコンサルティング営業に従事し、主に大手企業を担当。複数大学での嘱託講師、政府の政策提言有識者会議等も務める。2020年に独立し、株式会社Strobolightsを設立。企業の採用活動支援や学生コミュニティ運営、若手社会人キャリア支援を手掛ける。