いま、企業が、“ITエンジニア・DX人材の求人募集”で知っておきたい重要なこと

かつて、日本の企業の多くは、システムの開発をSIerなどに発注していたが、昨今は「内製化」の傾向が高まっている。一方で、ITエンジニアやDX人材は超売り手市場で「思うような人材を獲得できない」という人事担当者の悩みを聞く。自身が元エンジニアであり、人材エージェント会社で2000名以上のエンジニアの転職をサポートし、現在、HRコンサルティングサービスや採用業務代行(RPO)サービスを提供する芦川由香さん(株式会社レイン CEO)が「ITエンジニア・DX人材のキャリアと採用事情」について筆を執る。その第1回は、「ITエンジニア・DX人材の転職の実態に関するアンケート」から見えたこと。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)

*芦川由香さんの「HRオンライン」インタビューはこちら→人事部が自社に合ったIT人材を採用し、会社全体のITリテラシーを高める方法

手段であるはずのDX推進が、目的化している

 近年、デジタル技術の進化と普及が急速に進み、私たちの日常生活に大きな影響を与えています。スマートフォンやインターネットの普及はもちろんのこと、人工知能(AI)、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)などの新しい技術が次々と登場し、生活のあらゆる場面で活用されています。例えば、買い物ひとつとっても、オンラインショッピングの普及によって自宅にいながら世界中の商品を購入することが可能になりました。さらに、AIを活用したレコメンドシステムにより、好みに合わせた商品が提案されるので、オンラインで効率的で快適なショッピングを楽しむ方が増えたのではないでしょうか。

 そして、生成AIの登場で働き方も変わりつつあります。生成AIは多くの業務を自動化し、効率を大幅に向上させています。たとえば、文章作成やデータ分析、カスタマーサポートなどの作業が短時間で行えるようになり、労働者は、より重要な業務に集中することができるようになりました。

 このようなデジタル技術の進化に伴い、多くの企業が自社のデジタルトランスフォーメーション(DX)による業務変革を検討しています。DXの身近な例としては、レジのキャッシュレス決済の導入で、顧客にとっての利便性向上とレジ業務の効率化を実現しています。このように、企業はDX戦略を策定し、ビジネスモデルの革新や業務プロセスの見直しを行うことで、競争力を高めていく必要があります。しかし、ここで問題になるのが、いざ、DX推進を行おうとしても、何をすればよいかわからず、「とにかく、DXだ」というスローガンだけが先行してプロジェクトがスタートするケースがあることです。DX推進は、事業変革という目的のための手段であるはずなのに、DX推進自体が目的化しているのです。