フジテレビ問題
CMを再開するための条件とは?
このような背景から、旧ジャニーズと取引ができない状態は解消された。では、今般の中居・フジテレビ問題への対応として行われている、フジテレビに対するCM等の取引停止については、どうだろうか。
ここでは、「もともと問題がなかった場合」も含め、取引再開の可否を検討する際の基準を上記の3分類と合わせて整理してみたい。
〈もともと問題がなかった場合〉
この場合は直ちに取引の再開へと進むことが可能である。
〈個人の人権侵害と認識された場合〉
個人(社員)による独断の可能性が高く、また事後の組織的な対応が正常に機能していたと判断されるのであれば、取引の再開には問題がない。もちろん、そのような問題のある個人を重要な責務につけた任命責任が会社や担当役員などにはあり、また個人に対する処分が必要となるが、それは社内で対処すべき問題と考えられる。
〈部門が人権侵害をしていると認識された場合〉
部署内で問題が常態化しており、複数のメンバーが関わっている可能性が高い場合、そのようなルーズな管理体制を容認してきた管掌役員や幹部層には直接の責任があり、経営陣全体にも負うべき責務がある。取引先の立場から見ても、人権侵害部門を容認してきた部門を持つ会社と取引を再開してよいかの判断には悩むことになるだろう。
ただし、過去の責任が役員への懲戒処分や経営者の変更などで明確になり、また組織運営に関する改善策が明確に提示され、その実効性が十分にあると考えられれば、取引の再開を検討することは十分に可能であろう。
〈会社全体が人権侵害をしていると認識された場合〉
この場合、経営陣やガバナンス体制そのものが問題と認識される。よって、この企業と取引関係を続けるだけで自社の評判やリスク管理のあり方に影響を及ぼすことが予測される。経営陣の抜本的な入れ替え、外部視点からの牽制の充実、全面的な組織運営方法の改善計画の提示など、取引の再開にあたっては、とにかく全面的な変革とその実効性の担保が最低限必要となるだろう。先に示した旧ジャニーズの例のように会社(法人)はNGでも事業は問題なし、というような切り分けは今回のケースでは無理である。