「自己責任グセ」による
心理的な閉塞感が課題

 私たちが40代後半に差し掛かろうとするときに「中年うつ」という言葉を雑誌や書籍などで多々目にするようになりました。過酷な仕事、将来への不安、育児、離婚や親の介護などプライベートの変化、生活習慣などからうつ病を患う中年が増えています。

 私たちの世代は、「最後のマス」と言われ、同年齢の人が国内に約200万人もいます。人口においては、存在感が大きいのですが、われわれの世代が社会に出る際に就職氷河期がやってきて、職を得るのに本当に苦労しました。

 その上、新自由主義のもと競争させられ、何をしても自己責任だと言われ、蹂躙されてきました。未だに安定した状態で働くことができない人もいます。この状態は社会的損失だと言わざるを得ません。

 一方で、当事者として、「自己責任グセ」がついてしまっているがゆえに、何かが起きると自分自身を責めてしまったり、何か一歩踏み出せない状態になってしまったりしている人がわれわれの世代には非常に多いのではないかと感じます。気づいてみれば、自分たちの世代は“なかったこと”“存在しなかった人たち”になってしまっているわけです。

 結局のところ、私たちの世代の課題は突き詰めると、そうした「自己責任グセ」にみられるような心理的な閉塞感にあるのではないでしょうか。

 天下をとれなかった世代と揶揄するのでもなく、社会から冷たく退場させるのではなく、この世代をいかに活性化させるか。企業や組織に若返りを求めて若い人たちの採用や登用に目を向けることも重要ですが、この「自己責任グセ」がついてしまっている世代をいかに活性化させるかを考えると、日本は前に進みます。

やなせたかし先生がヒットしたのは
60代になってから

「なんのために生まれて、なにをして生きるのか、こたえられないなんて、そんなのはいやだ」

『アンパンマン』の主題歌「アンパンマンのマーチ」の一節です。私たちの世代は、この歌を幼少期に、リアルタイムでは知りません。いや、『アンパンマン』自体の存在は知っています。ただ、あくまで絵本として、です。