現在の中期経営計画(21年4月〜26年3月)を1年前倒しで終了し、25年4月から31年3月まで6年間の新中計として、31年3月期に売上高8兆円、営業利益8000億円、営業利益率10%、ROE(自己資本利益率)13%を目指す内容だ。その間、研究開発・設備投資に4兆円を投じる。
25年3月期の通期の売上高の見込みは5兆7000億円であり、30年度までに2.3兆円増となる“8兆円企業”への飛躍を宣言した形だ。さらに「30年代前半には、営業利益率10%以上、ROE15%以上を目指す」(俊宏社長)と意欲を見せた。
筆者は、この新中計を「オサムイズム」を継承しつつ“脱オサム”として「俊宏社長中心のチームスズキ」の成果への覚悟と決意を示したものと受け止めた。30年代以降には、いよいよSDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)などが競争力の鍵を握る時代が到来する。そうした「CASE時代」においても、高収益で優良企業となることで生き残る覚悟を示したのだ。
実際、俊宏社長は、一人でこの会見の壇上に臨み、質疑応答まで一人でこなした。最初に切り出したのが、修氏のことだった。「スズキは、21年に故鈴木修元会長の体制から私を中心とした集団指導体制に移行し、それから3年半、在り方を変えずにさらなる強化と、在り方を時代の進化に合わせたアップデートをしてきた」と俊宏社長は語った。
世代交代による理念の継承とアップデートは、業績にも表れている。25年3月期の売上高予想の5兆7000億円は、20年3月期の3兆4884億円から約63%増となるもので、コロナ禍があった21年3月期以降、売り上げは右肩上がりで成長している。俊宏社長は「現中計の目標値を1年前倒しでほぼ達成でき、30年代に向けた成長路線の足固めができた」と自信を深める。
かつて78年にスズキ(当時の鈴木自動車工業)の社長就任時に3000億円ほどだった売上高を「3兆円企業」に飛躍させた修氏が逝去し、25年は「鈴木修相談役がいない初めての年を経験する」(俊宏社長)。しかし、その中で打ち出した新中計の内容は、30年代へ真のグローバル企業としての勝ち残る意欲を示すには十分な内容だろう。