また、新中計では、コーポレートスローガンに「By Your Side」を掲げ、創業精神に戻り「生活に密着したインフラモビリティを目指す」と俊宏社長は説明した。これは、スズキの創業者、鈴木道雄氏が「母の織物仕事を楽にさせてあげたい」と鈴木式織機を母に贈ったことで生まれた、「小さなクルマでお客さまに寄り添い、お客さまの立場になって欲しいものを提供していく」というスズキの経営理念を徹底していく、というものだ。
新中計の発表会場には、今春からインドで量産を開始し、トヨタにも供給される「e VITARA」を展示し、その隣には浜松本社の前にあるスズキ歴史館から鈴木道雄氏が発明した「A56片側四挺杼織機」をわざわざ持ち込んで展示しており、創業精神を重視するという将来ビジョンを象徴させていた。
ホンダと日産の破談の例を引くまでもなく、自動車産業を取り巻く情勢の変化は流動的でスピードアップしている。“オールド企業”と新興企業の競争も激しくなる。20年に創業100周年を迎えたスズキは、改めて新時代に向けて、「俊宏体制」の経営手腕が問われる。
足元では、中国で大苦戦し、米国トランプ大統領の関税の動向に悩むほかの日本車メーカーを横目に、成長戦略を描く。だが、スズキとて今後単独で生き残ることは容易ではなく、資本関係にあるトヨタとの提携をどう生かすかも問われている。豊田章男トヨタ会長に「憧れのオヤジだった」と最高の追悼を言わしめた偉大な修氏亡き後のスズキを、真面目な性格の俊宏社長がどうかじ取りするのか。
とはいえ、俊宏氏は22年から自工会副会長にも就任しており次期自工会会長の有力候補にも上がってきているほど、経験値を重ねている。スズキの成長を実現するとともに、日本の自動車・モビリティ産業のリーダーとしての役割も求められよう。
(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)
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(2025年2月28日9:32 ダイヤモンド編集部)