また、グローバルでは適地生産を進めながら、国内の工場はマザー工場としての役割を重視し、生産技術、ノウハウをしっかり継続していくことを強調した。

 このように、意欲的な新中計を「俊宏体制」として打ち出したわけだが、同時に4月1日付で取締役・役員人事を行い、「俊宏政権」を固める新経営陣を発表している。

 取締役陣は、社長補佐や経営企画本部などを管掌するトヨタ出身の石井直己代表取締役副社長が続投し、俊宏社長の“右腕”としての立場を確固たるものとする。加えて、技術統括の加藤勝弘取締役専務が取締役副社長に昇格し、東京支店長で渉外広報担当の岡島有孝取締役常務が取締役専務に昇格する。一方、鮎川堅一副社長は、エグゼクティブフェローとなって副社長から外れる。

 このほか、村松鋭一常務が専務に昇格し、グローバル営業統括を務める。市野一夫常務も専務に昇格し生産関連を管掌する。なお、6月の株主総会では、村松新専務が取締役に選任され、鳥居重利専務が取締役から外れる予定だ。このほか、常務や本部長クラスの若返りを図って、25年度のスタートから「俊宏政権」を支える経営布陣に移行する。

 俊宏社長だが、15年6月に社長に就任して社長業11年目に入ろうとしている。社内外の評価も「社長として円熟味を増してきた」と聞く。「圧倒的なカリスマ性」でスズキを長年引っ張ってきた修氏を父に持った俊宏社長は、この新中計発表会見で修氏について聞かれ「いい教師であり、また反面教師でもあった」と、思いを語った。この言葉の裏には、息子として実父と身近に接してきた俊宏社長にしか分からないものがあるはずで、改めてスズキのリーダー役を「俊宏流」で担う覚悟だと、筆者は受け止めた。