成長戦略の詳細を見ていくと、まず四輪事業では世界販売420万台を目標とし、営業利益7000億円を目指す。また、二輪事業では世界販売254万台、営業利益500億円を目標とし、マリン事業で営業利益350億円を稼ぐ考えだ。加えて、新事業で売上収益500億円を設定している。
具体的な戦略の中心となるのが、四輪事業でのインド戦略だ。そもそもスズキが注目されるのは、関税リスクのある米国と販売不振の中国の両国で販売を行っておらず、競合に比べて優位なことがあるが、反対に世界の二大巨大市場である両国を抜きにして売上高8兆円を目指すには、最も高い成長が見込まれるインド拠点をさらに強化する必要がある。
そこで、まずインドの四輪車市場で現在約4割のシェアを50%まで回復するとともに、四輪・二輪の生産能力を強化、輸出拠点としてグローバル戦略の軸とする。また、BEV(バッテリー電気自動車)商品開発の核としていくほか、インド市場ではHEV(ハイブリッド車)に加え、CNG(圧縮天然ガス)、エタノール混合燃料対応などのFFV(フレックス燃料車)など、スズキなりのパワートレインのマルチ戦略を推進する。
インド重視が強まる中で「インド一本足打法」とも揶揄(やゆ)されることもあるが、インドを生産拠点として、アフリカ・中東といったインドと地理的に近くニーズも類似するグローバルサウスへの開拓を進めて新規地域での事業化に結び付けていくという方針だ。
一方で、新中計で注目されたのが、四輪事業の日本への取り組みである。国内の四輪市場全体は縮小するものの、スズキにとってはまだ成長余地があるとし、特に登録車販売を伸ばすことで、収益力を高めていく方針を掲げた。
今や、国内の乗用車市場で、スズキはトヨタ自動車に次ぐ2位の座にいる。軽自動車市場を引き続きけん引するとともに、A・Bセグメントでの登録小型車の拡販を狙うほか、HEVの強化・BEV商品の投入などを図ってシェア2位を継続していく。そのため、代理店網である“業販”体制もさらに確固たるものとして、販売力強化を進めていく。