白川方明Photo:Kiyoshi Ota/gettyimages

日本の人口減少は、日本経済が直面している最大の問題である。しかし、解決への本気度がイマイチ薄く、世論も諦めムードだ。そんな人口減少問題について、第30代日銀総裁の白川方明氏が語る。※本稿は、人口戦略会議『地方消滅2 加速する少子化と新たな人口ビジョン』(中公新書)の一部を抜粋・編集したものです。

「失われた日本経済」と「健闘する日本経済」
対照的なふたつのグラフ

 長期的に見た場合、日本経済が直面している最大の問題は、少子化に伴う人口減少の問題であると思う。

 日本経済を巨大なボートに喩えると、高齢化は漕ぎ手であった人が次々にオールを置き、一般乗船客になるイメージの問題であるのに対し、少子化はボート内の人がまばらになるという問題である。そのような船の将来イメージを思い描くと、慄然とする。

 少し具体的なイメージで議論してみよう。次の2つのグラフは2000年以降の主要国の実質GDP(国内総生産)の推移を示している。

グラフ同書より 拡大画像表示

 上段のグラフは2000年の水準を100とした場合の実質GDPの推移を示しており、日本のGDPの伸びは最も小さい。下段のグラフは生産年齢人口1人当たりの実質GDPの推移であり、日本の伸びは最も大きい。

 両者は全く対照的なイメージを伝えている。一方は「失われた日本の〇〇年」のイメージであり、他方は「健闘する日本経済」のイメージである。ここには示していないが、1人当たりの実質GDPの伸びで見ると、主要国の平均並みである。

 この2つのグラフから言えることは、生産や消費活動の核となる生産年齢人口減少の影響がいかに大きいかということである。ちなみに、この期間中に生産年齢人口は約12%も減少した。生産年齢人口1人当たりで見ると日本経済はそれなりに健闘しているが、いかんせん、生産年齢人口の減少は大きい。