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少子化が加速する日本において、ついに東京都の合計特殊出生率が1を下回り、0.99となった。日本で最も人口規模が大きい東京都の出生率低下が持つ意味を、国立社会保障・人口問題研究所人口構造研究部長の小池司朗氏が分析する。※本稿は、人口戦略会議『地方消滅2 加速する少子化と新たな人口ビジョン』(中公新書)の一部を抜粋・編集したものです。

全国の合計特殊出生率が
大都市圏の影響を受けやすくなった

 1970年以降の全国と東京都のTFR(編集部注/合計特殊出生率)の推移を図5-6に示す。

図5-6同書より 拡大画像表示

 TFRの変化は概ね連動しているが、一貫して東京都の値が全国値を下回っている。両者の差に着目すると、80~90年代と比べて近年はやや縮小しているようにもみえるが、その要因としては主に2点が考えられる。

 1つは、TFRでみた場合は出生タイミングの変化の地域差の影響を受けるという点である。80年代以降は全国的に晩産化が進行したが、東京都でその程度がより大きかったため、TFRでみれば90年代後半頃まで東京都と全国の差は拡大した。

 一方、近年においては「団塊ジュニア世代」を中心として30歳代後半以降に東京都では多少の産み戻し(いわゆるキャッチアップ効果)が起こり、差が縮小したと解釈される。

 もう1つはさらに単純なことであるが、東京都をはじめとする大都市圏の人口シェアの拡大である。

 出生率の低い地域となっている東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)と大阪圏(京都、大阪、兵庫、奈良)の8都府県における15~49歳日本人女性人口の全国に占めるシェアは、80年の40.7%から2020年には46.3%に上昇しており、以前に比べ全国のTFRが大都市圏のTFRの影響を受けやすくなってきていると言える。

 結局のところ、全国と東京都の出生率の相対的な関係は大きく変化していないと解釈するのが妥当であろう。