「風俗は経験ないけど、キャバクラはやったことあったんで、正直そんなに抵抗はなかったですね。私的にデメリットがないから……」
明るい画面のなかで歯を見せて笑う彼女に記者はやりきれない気分になった。わざわざ海外に行ってまでカラダを売るとはどういうことだ?リスクをカネに換えるなら、さぞかし暗いバックボーンがあると思っていたが、ミユにはそれがないようだった。
聞けば両親には何不自由なく育てられ、それなりに名の通った高校と大学を卒業していた。彼女に欠けているものがあるとすれば、自らの将来の夢や目標といった類だろう。見ず知らずの人の前で本心を語るのを恥じらい、返答を避けているようでもない。そこには自分探しをするありふれた若い子がいた。
4カ月前、ミユは東京23区内の賃貸アパートでダラダラとした日々を送っていた。勤務していたエステ店を、店長との人間関係の悪化を理由に、その1カ月ほど前に辞めていたのだ。スマホのアプリで銀行口座を確認すると、残高は20万円あまり。生活費と来月分の家賃を払ったら残額は8万円。この状況を理解はしているものの、深いため息が出るだけで、さんざん漁った転職サイトを開く気もでなかった。
「実家に帰ろうか……」と考えたとき、半年前に同じエステ店をやめた先輩に相談のLINEを送るとすぐに返信があった。
「海外で働く気ない?海外で働くなら家賃もいらないし。私が使ってるエージェント紹介しようか?日本のエステより全然ラクに稼げるし、単価もいいよ」
「見つかったときはそのときだ」
スーツケースひとつで渡航
先輩は数カ月前からワーキングホリデービザを使いカナダのマッサージ店で働いているという。聞けば風俗店まがいのことをする店のようだ。この間まで働いていたエステ店は性的サービスを提供する店ではなかったため、先輩はこうした店で働くことを心配してくれたが、「日本でやりたいことがないし、抵抗もないですよ!」と、前向きな返事をした。不思議と迷いはなかった。
「海外生活」と「ラクに稼げる」。この2つは近い将来に希望が持てなかったミユにとってパワーワードだった。