玄関を入ると、客は直接女の部屋を訪れる仕組みのようだ。韓国人の女がリビングを占有しており、ミユはベッドルームをあてがわれた。
「思っていたよりもきれいなんだな」
それが部屋を見たミユの第一印象だった。カナダで売春は公的に認められていない。売春を罰する法律はないが、買春は違法ということなのだ。売春宿の経営を含む売春に付随する多くの行為が罰則の対象になっている。
翌日、店から「30分コースで指名が入った」ことがウィーチャットで伝えられた。事前に「ミユはこの仕事が初めてだ」ということは客に伝えてあると付け加えられていた。不思議と緊張はなかった。日本でエステの客を迎えるのと変わらなかった。
「カネのため」と心の中で繰り返し、呪文のように言い聞かせた。
「これは仕事」と割り切って
初日から11人の男性客と寝た
「初めての客」は英語がしゃべれる40代の中国人で、すぐ近くに店を構える飲食店の経営者だという。客は気を使ってくれているのか、笑顔で、しかもゆっくりとした簡潔な英語で話してくれた。店から事前にウィーチャットで説明されているとおり、前金で240カナダドル(約2万6000円)を受け取り、自ら服を脱ぎシャワーへと案内した。
店からはこれまたウィーチャットで、前後の着替えとシャワーが各10分、行為は10分と伝えられている。見ず知らずの男と裸で向き合い、自らのありとあらゆるところを触られる。
「でも、これは仕事」
自分がこんなことをしていることを知る人間は誰もいない。しかも異国の地だ、考えると、すっと気がラクになった。心を無にしていると、行為は終わった。男が自分に覆いかぶさっている10分間を含め、30分はあっという間の出来事だった。男が紳士的に接してくれたこともあったのだろう。初日は気づけば、11人の男たちがミユの部屋を訪れていた。
その初めての客から2カ月。今やスマホの画面の中で微笑む彼女を200人以上の男が指名していた。
「怖い思いはしてない?」
ここまで、あっけらかんと説明するミユに記者は問いかけた。