サッカーがサウジアラビアの経済政策に
資金を注ぎ込むが青写真通りにはいかない 

 これはサウジアラビア政府が掲げる一大プロジェクト、ビジョン2030の一貫でもある。長くオイルマネーに頼っていた同国の経済構造を多様化させ、国外からより多くの投資を呼び込んでいく。来たる30年が節目にすえられた変革のなかに、世界的な人気をもつサッカーも組み込まれたわけだ。

 しかし、湯水のようにお金を使っても、青写真通りにものごとが具現化されていくとは限らない。例えば18クラブで構成されるSPL全体のレベル。もともと強豪だった先述の4クラブと他のクラブとの実力差がさらに拡大し、結果としてリーグ全体のレベル低下や不人気を招く悪循環が生まれて久しい。

 これがより高いレベルでのプレーを望む若手や中堅に、SPLが敬遠される大きな要因となった。全盛期を過ぎ、富を求めたベテランも刺激のない日々に嫌気がさしたのか。フランス代表でも活躍した37歳のFWカリム・ベンゼマ(アル・イテハド)は、今シーズン限りでの引退が何度も報じられている。

 そして、4クラブのなかでもっとも裕福とされるアル・ナスルが、最後にSPLで優勝したのが6年前。スーパースターのロナウドが加入した23年以降も状況は変わらず、全日程の3分の2近くを終えた今シーズンも、首位のアル・イテハドに勝ち点で8ポイント離された3位に甘んじている。

 こうした状況のもとで、シーズン途中での三笘の獲得へ向けてビッグマネーを用意したアル・ナルスの補強戦略の舞台裏を、イギリスの「スカイ・スポーツ」は次のように伝えている。

「サウジアラビアでプレーして3シーズン目で、一度もタイトルを獲得していないロナウドを後押ししたいとアル・ナスルは考えている。ロナウド自身も、クラブの上層部に対して『トロフィーを勝ち取りたい』とプレッシャーをかけたからだろう。高齢化したスーパースターたちの老人ホームではなく、若くて成長途上にある選手も加わった陣容で戦う新たな戦略の一環として三笘らが狙われた」