すべてに“日産車の匠”の技を注入
その走りはプレミアムスポーツという表現が似合う
スポーツスペックのメニューは多岐にわたる。加速感向上のためパワートレーンを制御するVCMの特性を専用化。前後サスペンションはバネ/ショックアブソーバー/バンプラバーなどを変更(車高は20mmローダウン)。タイヤはミシュランe-プライマシー(205/50R17)。ボディにはパフォーマンスダンパーを装着しダンピング特性を最適化している。電動パワーステアリングやVDCの制御まで見直され、大型リアスポイラーで空力特性もリファインする念の入れようだ。
車両セッティングには、オーラNISMOの開発経験が生かされており、ショックアブソーバーやバンプラバーなど一部パーツは共用している。ただし、機敏さと明確なスポーティ感を目指したNISMOに対し、スポーツスペックは、爽快さとリニアさ、そして上質性を追求したという。
実際の走りは、伸びのある加速と意のままのハンドリングが印象的だった。ドライブモードはECO/NOMAL/SPORTの3種類。ECOでも加速の力強さとレスポンスは標準車とは明確に異なり、NOMALを選択すると全域でパワフルさを実感。SPORTモードでは、まさに胸のすくダッシュが満喫できた。
ハンドリングは適度なシャープさと安定性が高次元で融合していた。その実力はNISMOとほぼ同等。それでいて足回りはしなやかで乗り心地は良好だ。これは大人に最適なスポーティカーである。e-POWERのスペックは標準車と同様だが、走りの実力は明らかに違う。
高い完成度は、日産車を知り尽くした匠だからこそ実現できたもの。レザーシートに身を落ち着け、静かな室内でアップテンポな走りを楽しむのは特別な体験だった。スポーツスペックが目指した方向性は、あのアルピナに近い。
(CAR and DRIVER編集部 報告/横田宏近 写真/横田康志朗)