Cだけでなく、A課長にも厳しい処分が
A課長はCから聞いたことをB部長に報告し、翌日の夕方、経営陣を集めて懲罰委員会が開かれた。CとA課長も招集を受け、それぞれ経過説明と弁明の機会を得たが、Cは着服の事実を認め、「申し訳ありませんでした」と謝り続けた。
翌日、就業規則に基づいてCを1月末日付で懲戒解雇することが決定。A課長にはCの行為を管理できなかった責任を問う形で、同日付での諭旨退職を迫った。A課長は激怒し、B部長に訴えた。
○ 懲戒解雇
・従業員が重大な規律違反や不正行為を行った場合などに、罰として企業が行う解雇処分であり、就業規則の懲戒規定に基づいて行う。
・就業規則に定めがある場合、退職金の減額や不支給になることがある。
・社員が転職活動をする場合、退職理由でマイナスの影響が生じる。
○ 諭旨解雇(諭旨退職)
・諭旨解雇とは、会社が社員に退職届の提出を促し、届を提出させたうえで普通解雇的に扱うことをいい、退職を勧奨して自主的に退職してもらうのが諭旨退職である。諭旨解雇(諭旨退職)の社員が退職届の提出を拒否した場合は、懲戒解雇へと移行する。
・本来は懲戒解雇に相当する行為を働いたとしても、それまでの功労や本人の反省により情状を酌量し、温情として行われる。
・退職金は就業規則の定めにもよるが、自己都合退職として計算され、全額支給することが多い。
・諭旨解雇(諭旨退職)の離職理由は「自己都合による退職」として扱われる。
「C君の上司として、私にも処分があることは覚悟していました。しかし諭旨退職とは重すぎませんか?昨日の委員会でもお話ししたように、私はC君が売上金を着服したことを知るすべがないし、競馬にはまって借金まみれだったことも初耳です。彼は普段通りバリバリ働いていて、どこも変わった様子なんてなかったです」
「だが、君にも管理不行き届きの責任を取ってもらわないと、他の社員に対する会社のメンツが立たないよ」
「じゃあ言わせてもらいますが、経理がもっとしっかり売り上げの入金管理をしていればこんな大事にはならなかったし、C君だって着服できなかったはずです。とにかく2人ともクビなんてひどすぎます。私たちだけの責任にしないでください!」