“ボタンの掛け違い”に
気付いたフジテレビ

“10時間超会見”に至るフジテレビの危機管理広報は失敗続きだった。

 最大のミスは初動において、

(1)根拠を示さずに社員関与の疑惑を全面否定した。
(2)事態拡大を恐れた“閉鎖会見”でメディアを敵に回した。
(3)内部調査を開示せず、独立性の高い第三者委員会調査も否定、隠ぺい疑惑を招いた。

 の3点だと考える。

 端的に言えば、アカウンタビリティー(説明責任)を果たす覚悟が出来ていなかった。

 大変に痛い“ボタンの掛け違い”であり、“炎上”後に慌てて土下座対応に切り替えても火に油となった。

 危機管理上、一番怖いのが「隠ぺい疑惑」だ。企業側が自己防衛のために不利な事実を隠しているとメディアに受け止められると、簡単に“信用崩壊”が起き、それ以降、どんな説明も受け入れてもらえなくなる。

 フジテレビは初動において、文春記事の真偽を知りたいというメディアのニーズから逃げず、開示可能な限りの情報を盛り込んで公表資料を練り上げ、 会見に臨むべきだった。

 具体的には、女性への対応経緯を中心に内部調査の概要をプレスリリースにまとめ、その場でメディアに配布する勇気と周到さが必要だったと、筆者は考える。質疑に何時間かけようとも、口頭説明は混乱や誤解を招き、メディア側の欲求不満を高じさせるばかりだ。

 この点で、2月27日の清水社長らの会見は画期的だった。

 まず、コンプライアンス(ガバナンス)体制や人権保護体制などについて、取締役会で説明したばかりというプレゼン資料の抜粋を提示。

 さらに、プレスリリースを読み上げ、

(1)女性から相談を受けたが会社として適切な対応をとれず、多大なる心労・負担をかけた。
(2)コンプライス規定に従わず、適切な報告、事実調査を行わずに中居氏の起用を続けたことは不適切だった。

 の2点について改めて謝罪した。

 ようやく、フジテレビとしての問題認識が、対外的にクリアになった。