さらに、放送のなかにその地域独特の表現が混じったりもする。例えば、JR四国の特急列車に乗ると、自動放送が流れたあと、車掌による肉声放送が始まる。このとき、車両数の案内の際に、結構な確率で「この列車は6両つなぎです」とか「3両つなぎ」という表現が使われる。ほかのエリアだと6両編成とか3両編成と放送することが多いが、四国では「つなぎ」の表現が多い。すべての車掌がこの表現を用いるわけではないが、四国独自のフレーズと言えそうだ。

 また、九州では単線区間における上下列車の交換待ちの際、「離合待ち」という表現を用いることがある。これもご当地表現の1つと言ってよいだろう。また、北海道で早朝の列車に乗ると、車掌による肉声放送で「おはようございました!」というものがあった。ただし、急速に進むワンマン化の影響で、車内で耳にすることはほとんどなくなっている。

 このほか、関西の私鉄では自動アナウンスの冒頭に「みなさま」と呼びかけてから放送に入ることが多い。これは東京近辺ではほとんど見られないもので、筆者自身、大阪に向かうと、その丁寧な言葉遣いに常に感動を覚えている。

時代と共に消える鉄道音
肉声のアナウンスも減った

 鉄道は常に進化している。技術面はもちろん、運行形態からサービス内容の変更など、あらゆる変化とともに鉄道は存在する。当然ながら、経営状態や収益事情による変化も多く、合理化によって消え去っていくものも多い。

 そんななかで、消滅してしまう“鉄道音”も少なくない。例えば、年々数を減らし、今や風前の灯となっている吊掛駆動車(*)をはじめ、動態保存される蒸気機関車も運行回数が減っている。さらに、旧式踏切の警報音も絶滅寸前の状態だ。定期運行される夜行列車も寝台特急〔サンライズ出雲・瀬戸〕を残すのみとなっており、客車列車も全廃の危機に晒されている。

(*)…編集部注/つりかけくどうしゃ。台車枠と車輪軸の間にモーターが設置された列車