こうしたことから、精神疾患の治療法として生まれた認知行動療法は、医療場面だけでなく、だれもが使うことのできるこころのアプローチとしても発展することになりました。自分にとって大事なことに目を向け、それに近づくのに役に立つ手立てがたくさんあります。

そもそも、人は
悲観的に考える動物
うつや不安、怒りなどのネガティブな感情を感じないで、面白おかしく生きていきたいと考えている人は少なくないかもしれません。しかし、ネガティブ感情は、わたしたちが生きていくうえで大切な役割をはたしています。
そもそも、人は悲観的に考える動物です。
なにか突然の出来事が起きたとき、わたしたちは、まずよくない可能性を考えて身を守ろうとします。情報が少なく、なにが起きているかすぐに判断ができないからです。
これは原始時代から続いているわたしたちの習性です。
原始時代、草原を歩いているときに、草むらで突然、音がしたとします。そのとき、危険な動物かもしれないと瞬間的に考えて身がまえるのは、自然な反応です。
のんびりとしていると、危険な動物に襲われてしまう可能性があります。そうならないために、まず「危険だ!」と考えて身を守ろうとするのです。
このように、受けとった情報を判断し、対応するこころの動きが認知です。認知行動療法では、こころの力を生かすために、この認知の働きを上手に使えるようにしていきます。
でも、どのようにすれば認知の働きに気がつくことができるのでしょうか。
とっさの考えにしばられないで
現実に目を向けることが必要
自分がどのように考え判断しているかを、いつも意識するようにしているといいのかもしれません。でも、それは煩雑で効率的ではありません。