国宝「釈迦如来像」に会いに行く

これから、涅槃会を機に、ぜひ京都でご覧いただきたいお釈迦様の仏像(釈迦如来像)をご紹介します。釈迦如来の多くは右の手のひらを前に向けて胸の辺りに掲げ、左手の先は下に向け、すべての人々をあまねく救うポーズを取っておられます。
釈迦如来像は仏像の始まりであり、お釈迦様の立ち姿が、その後さまざまな仏像として派生していきます。阿弥陀如来、薬師如来といった「如来」、観音や地蔵といった「菩薩」、仏のガードマンである「明王」、お仕えする「天部」など、詳しいお話はまた別の機会にいたしましょう。
まずは国宝の釈迦如来像から。京都駅から南に30km離れたJR奈良線「棚倉」駅から昔ながらの日本家屋が点々と立つのどかな道を歩いて20分ほど。竹林が続く山の麓に、小さなお寺が現れます。“タケノコとお茶の里”山城(木津川市)にある真言宗の蟹満寺(かにまんじ)です。京都ツウでも訪れた方は少ないでしょう。
お参りをと本堂前のお賽銭箱に向かうと、牡丹の花のような寺紋が目に留まります。よく見ると両方のハサミを頭上に掲げた蟹!香炉、本堂の蟇股、軒丸瓦などあらゆる所に蟹の意匠(寺紋「蟹牡丹」)が見られるのです。この「蟹」にまつわるお話はのちに触れますが、ご本尊である「釈迦如来坐像」(国宝)に会いに本堂内部へ。他に参拝者がいなければ、お釈迦様と一対一で静かに向き合う貴重な体験ができます。
木津川市の解説によれば、仏教美術史上、薬師寺(奈良)の金堂にまつられる薬師如来像に比肩し得る存在であり、1350年前の白鳳時代から変わらず同じ位置にいらっしゃることが近年の研究で判明したのだそうです。