三つのお寺の「涅槃図」を巡る

東福寺(東山区)の参道途中に架かる臥雲橋東福寺(東山区)の参道途中に架かる臥雲橋

 京都の「涅槃図」巡りは、青もみじや紅葉の美しさで名高い臨済宗東福寺派の大本山、東福寺から始めましょう。京阪本線・JR奈良線「東福寺」駅から徒歩10分。「永遠のモダン」を追求した作庭家、重森三玲による名庭でも知られています。

大涅槃図」は、3月14日(金)から16日(日)の3日間、法堂にて無料公開されます。室町時代中期の画僧・明兆筆で、縦12m×横6.5mの大作。天井に描かれた堂本印象筆「蒼龍図」との共演は圧巻です。東福寺の涅槃図には実物大の猫の姿も。

 大涅槃図を描いている明兆の元へ一匹の猫が度々遊びに来たことから、猫を追加したといわれています。涅槃会当日は、志納により甘酒の接待が受けられるほか、ご朱印など涅槃会限定のアイテムも授かれますよ。

 東福寺から北東方面に徒いて20分弱、皇室の御香華院として長く篤い信仰を集める真言宗泉涌寺派の総本山・御寺泉涌寺(東山区)の仏殿でも、3月11日(火)から16日(日)にかけて「大涅槃図」が公開されます。こちらは江戸中期に明誉古礀上人により描かれたのもので、縦16m×横8m、重さ150kgほどもある日本最大のもの。堂内の天井高を超えるビッグサイズであるため、天井の面も利用するよう棒を使って折り曲げ、コの字形に掲げられています。

 雪舟をテーマとした第8回でご紹介した日蓮宗本山の本法寺(上京区)では、3月14日(金)から4月15日(火)までの1カ月間にわたり、春季特別寺宝展として、桃山絵画の巨匠・長谷川等伯筆「仏涅槃図」(国の重要文化財)が公開されます。

 生まれ故郷の能登から上洛した等伯は、生家の菩提寺の伝手を頼って本法寺の塔頭(たっちゅう)で暮らし、絵を描くことに勤しんだといいます。こちらは縦6m×横4mと、じっくり鑑賞するにはちょうど良い大きさかもしれません。釈尊涅槃会は3月14日(金)に行われます。

 本法寺が現在地に移転したときの貫首で、等伯のよき理解者でもあった日通上人と親交を深めたことで、等伯は晩年にこの涅槃図を寄進しました。長男の久蔵の七回忌追善供養のため描かれ、裏面には日蓮宗の祖師たちの名前、本法寺の歴代住職、等伯の祖父母や養父母、そして26歳で夭折した久蔵の供養名が記されています。

大涅槃図泉涌寺の大涅槃図は日本最大 写真提供:泉涌寺