嵯峨野で“生身の釈迦如来”に会う

嵯峨野の清凉寺といえば、『源氏物語』光源氏のモデルの一人とされる源融の別荘跡が起源です。インドから中国を経て日本に伝わった釈迦如来立像(国宝)がご本尊ですが、70余年前に胎内から絹製の五臓六腑が見つかったことから、“生身の釈迦如来”と称されています。37歳当時のお姿で、お顔立ちは濃いめ。スレンダーな体形、何より脚が長い! ので、立ち姿が様になります。
こちらの釈迦如来立像、通常は非公開で毎年春と秋に特別公開されます。今年は奈良国立博物館の特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」の後期展示にお出ましになるため、5月14日(水)から6月中旬まで奈良に遷座される予定です。
3月15日(土)の涅槃会の後、午後8時ごろから恒例の「お松明式」が執り行われます。高さ約7mもの3基の巨大な松明が燃え盛り、夜空を焦がします。その年の稲作の出来を占う儀式であり、釈迦の荼毘(火葬)を表すとも。京都の早春を彩る風物詩として、一度は見ておきたい年中行事です。
次のお釈迦様は、清凉寺から西へ10分弱、平安初期の第52代嵯峨天皇の命により慈覚大師円仁が開いた天台宗の二尊院(右京区)へ。寺名からもうかがえるように、ご本尊はお二人です。極楽への往生を願う人を現世からあの世へと送り出す「発遣(ほっけん)の釈迦如来」と、極楽浄土へ迎え入れる「来迎(らいごう)の阿弥陀如来」の二尊、いずれも鎌倉時代の作とされ、国の重要文化財です。
一見左右対称に見えますが、お顔や体つき、衣のドレープに違いが見られますので、目を凝らして拝しましょう。