生田斗真が挑む「江戸城の怪物」
一橋治済という悪役の魅力
NHKドラマ10『大奥』シーズン2(2023年)をご覧になった方は、一橋治済のことを、というか治済の怖さをもうご存じでしょう。男女逆転させて描いた『大奥』で仲間由紀恵さんが演じた治済は、「江戸城の真の主役はわたくしです」と微笑みながら、松下奈緒さんの意次、安達祐実さんの松平定信を振り回し、自分にとって邪魔な人たちを、手下を使って淡々と殺していきます。相手が目の前でのたうち回って死んでいくのを、楽し気に見つめていましたね。

松村邦洋 著
しかも、人を殺すにしてもその動機がよくわからない。息子の家斉を将軍の座に就けて、権力をほしいままにするのはともかく、本当は何がほしい人なのかがハッキリしません。だからドラマ中最大の悪役、モンスター級の悪役なんですよ。グーグルで治済の名前を検索しようとすると、同時に「サイコパス」という単語が現れるくらい、観た人にインパクトがあったんだと思います。
『べらぼう』で治済を演じるのは生田斗真さんです。大河『鎌倉殿の13人』(2022年)で演じたのが源仲章。鶴岡八幡宮での源実朝暗殺の時、北条義時と間違えて公暁に斬殺される役なんですけど、義時役の小栗旬さんが「あいつムカつく」と苦笑いしてたくらいイヤーな悪役。ほんとにいい演技でしたね。
生田さん、配役が決まった後のインタビューで、「(源仲章の)あまりの悪役ぶりに、多くの皆様に嫌われる事となりました(笑)」「今回は“なんかむかつく仲章”を超えるべく、怪物と呼ばれた男、一橋治済をつとめます」とコメントしてます(笑)。大河の悪役が板についてきましたね。
治済黒幕説ももちろん十分ご承知のようで、「ニコニコしながら邪魔者を次々と排除していく気味悪さを身勝手に演じたいと思います」「人当たりが良くて、すごく優しそうなのに、非道な行いを平気な顔でやり遂げていく。そんな治済を目指していきます」と。これはかなり期待できそうです。