優れたチームは、ポジティブな感情的環境をもたらすような「規範」、つまり合意された関わり合い方のパターンを生み出していたのだ。そうしたチームは、心理的安全性や信頼感を醸成するものなど、さまざまな規範を築いていた。高業績チームをつくるうえで欠かせないのは、チームの内外の感情を認識し、制御するための規範なのだ。これらの規範が、とりわけ優秀なチームが生み出す価値の最大30%を説明した。こうしたチームの強みは集団としてのEQ(編集部注/Emotional Intelligenceの略。自分の感情を知的に活用する能力、すなわち感情的知性)の高さにあると、この研究は結論づけている。

 ドリュスカットとウルフは、「チームEQ」と名づけたモデルを用いて、チームのさまざまな規範のレベルを特定した(注3)。この分析を通して、高業績チームが全体として持つEQに、重要な「規範群」が含まれることが明らかになった。優れたチームはこれらの規範群を併せ持っている。

高業績チームの規範群その1
「メンバーは互いに助けあう」

 1つめは、チーム全体としての「自己認識」を生み出し、チームメンバーがお互いに助け合う方法を規定する規範群だ。この種の規範は、「メンバーのニーズや視点、スキル、感情」を認識し、理解するのに役立つ。チームがオプティマルなレベルで活動するためには、「メンバーが自分たちのニーズや、自分たちのこと、チームのことを話し合う必要があります。……つねにそうできなくても、定期的に話し合いの場を持つことが大切です」とドリュスカットは強調する。

 多くのチームが「チェックイン」と称して、会議を始める前にお互いが今感じていることを簡単に報告している。この単純なエクササイズは、集団としての自己認識を高める効果がある。メンバーは気になっていることや、うれしかったことを報告するかもしれない。そういった話を聞いて、お互いの気心を知るようになる。

 チームの「関わり合い方」、つまりチームについて学び、チームとしての自己認識を持ち、チームを運営する方法に関する規範も、この規範群に含まれる。集団としての自己認識を持つチームは、「チーム全体としての仕事ぶりや雰囲気を認識し、チームの協力の度合いを評価するための情報を収集する」。

注3 V. U. Druskat and S. B. Wolff, “Building the Emotional Intelligence of Groups,”Harvard Business Review 79, no. 3 (2001): 81ー90.