「VTuberの面白さがわからない」と言う人が知らないエンターテイメントの本質写真はイメージです Photo:PIXTA

アバター(キャラクター)を使って、オンライン上での動画配信やライブ配信を行うバーチャルYouTuber、略してVTuber(ブイチューバー)。アニメキャラクターのようなビジュアルでありながら、観客と同じ世界を生きる人間が演技を担っているのが、ひとつの特徴だ。気鋭のメディアライター・草野 虹氏が、VTuberの持つエンタメ性の魅力と本質について解説する。※本稿は、岡本 健・山野弘樹・吉川 慧編著『VTuber学』(岩波書店)のうち、草野 虹による執筆パートの一部を抜粋・編集したものです。

VTuberが持っている
エンターテイメント性

 本稿で筆者が目指すのは、音楽とネットカルチャーの変遷を追っていきながら、VTuberのエンターテイメント性について考えてみることである。筆者は「唯一絶対の正解」を示したいというわけではなく、広範なVTuber文化について考えたり分析したりする際の「きっかけ」が提供できればと思っている。

 筆者は学者や批評家ではなく、普段は「Real Sound」「KAI―YOU」「インサイド」などのウェブメディアでVTuberについてのコラムを執筆したり、ロックバンドやアニソンシンガーらへのインタビューや作品レビューを書いたりしているライターである。そのため、学術論文や研究書の文章スタイルや考え方のアプローチとは異なる部分があるとは思うが、その点はご容赦いただきたい。

 仕事としてVTuberをエンターテイメントとして捉えて文章を書いている1人の人間の視点から、VTuberのエンタメ性を考えてみたものとご理解いただければと思う。

バーチャル空間を舞台に
活躍する人々の一種

 VTuberの前に、その名称の参照点でもあるYouTuberについて説明していこう。

 YouTuber(ユーチューバー)とは、世界的な動画共有サイト「YouTube」に、自作した動画作品などを公開することで収入を得ている人物や集団のことを指す。

 似たような存在として、Instagrammer(インスタグラマー)やTikToker(ティックトッカー)などがおり、それぞれInstagram、TikTokといった大きな影響力を持つ画像投稿サイトや動画投稿サイトなどで活動している。くわえてライブ配信が可能なプラットフォーム上でリアルタイムにストリーミング配信する「配信者」「ストリーマー」と呼ばれる人や、日本で発達してきた独特のネットカルチャーを見てみると、動画共有サイトに動画コンテンツを投稿する人を「動画主」や「うp主」などと呼ぶこともある。