今が最後のチャンス
補助金をアテにしては立ち行かない

 さまざまな問題と、その対策について触れてきました。ここまでをお読みになった中には、「話はわかったが、それはもとをただせば、あんたたち、自民党のせいなんじゃないの」と言いたくなった方もいることでしょう。

 言い訳をするつもりはありません。戦後、ほとんどの期間、政権与党にいたのは自民党です。日本の現状に関しての責任は私たち、自民党に大きな責任があります。

 これはこの問題に限らず、安全保障しかり、エネルギー問題しかり、財政問題しかり、「面倒なことは先送り」としてきたツケなのだろうと考えています。

 最近、話題となることが多くなった安全保障法制にしても、日本が独立を果たした時に、整備をすべきだったでしょう。また、その時に改憲もすべきだったのでしょう。

 それをようやく、進めようということになっています。

 たしかに遅い。しかし、まだ完全に取り返しのつかないところにまでは来ていない。だから「遅きに失した」とならないようにしなければならないと考えています。

 流れを変えるには、地方の力が必要になります。

 地方がただ中央からの補助金をアテにしているといった、これまでのあり方では、国家自体が立ち行かなくなります。地方と、そこに住む人たちが自信を持ち、誇りを持ち、感動するストーリーを紡ぎながら、それぞれの地方を作っていく。その姿勢が今の日本には絶対に必要である、と私は考えています。

 江戸時代に、徳川幕府が地方のために何かやってくれるというようなことはなかったはずです。そのおかげで地方に独自の文化、産業、教育が発展しました。

 その頃に戻れなどと申すつもりはありません。しかし地方の自立ということをもう一度考えてみるべきではないでしょうか。

書影『私はこう考える』『私はこう考える』(新潮新書)
石破茂 著

 官と民のあり方、地方と中央のあり方、官と個人のあり方、そういうものを国民全体でもう一度考えてみる。

 それによって、日本人が幸せになり、地方が豊かになり、日本国全体が豊かになっていく。

 さまざまな問題を抱えているとはいえ、世界的に見ればまだまだ私たちは豊かさを享受し、平和な生活を送れています。

 長い歴史や文化を誇り、しかもその伝統がいまだに息づいています。素晴らしい自然も残っています。先人たちが遺してくれたこの日本を素晴らしい形で将来世代にもつなぎ、残していくのは、今の時代の私たちの責任です。