社会の不平等が絶対になくならない、恐ろしい理由写真はイメージです Photo:PIXTA

ヨーロッパに古くから存在する貴族階級の人々などを代表に、世の中には“特権的支配階級”が存在する。そういった“社会的不平等”は、たとえ熱心な政治的な介入があったとしても、絶対に揺らぐことはないほど強固なものなのだ。完全に平等な社会など実現し得ない理由を、気鋭の哲学者が解き明かす。本稿は、ハンノ・ザウアー著、長谷川 圭訳『MORAL 善悪と道徳の人類史』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

社会的不平等を測る指標
「ジニ係数」と「SES」

 社会的不平等ほど政治評論家が頭とキーボードを頻繁に使うテーマは、ほかにほとんど存在しない。

 社会の不平等はさまざまな方法で測ることが可能だ。所得の不平等を測る方法としては、「ジニ係数」が最もよく知られている。0から1の数字で示される結果は国家レベルでの分配の不平等さを表す。つまり、国全体を対象としているということだ。

 ジニ係数が1の場合、たった1人が国の全財産を所有し、ほかの人は何ももっていないことを意味する。0の場合は、全員がまったく同じ財産や収入を有している。ざっくりと言えば、世界で最も不平等な国家、たとえば南アフリカはジニ係数がおよそ0.6になる。不平等感の強いアメリカ合衆国やロシアで0.4から0.5のあいだ、ドイツやオランダのような比較的平等な国家で0.3をわずかに下回る。

 小さな集団あるいは個人間の不平等を測る方法としては、SES(社会経済状況)が利用されることが多い。SESはジニ係数より少し複雑だ。この方法を用いることで、所得や財産の分布、教育レベル、生活様式、心身の健康、あるいは職業的な名声を測ることができる(注1)。

 平均以上の所得があり、親から財産を受け継いだ教養ある編集長や医師はSESが高くなり、逆に特別な職業訓練を受けていない失業者はSESが低くなる。

 社会の不平等が私たちの政治意識において中心的な役割を担っていることは、2013年に世界でベストセラーになったフランス人経済学者トマ・ピケティの著書『21世紀の資本』〔訳注:日本語版は2014年刊行〕を読めばよくわかる(注2)。

 この本は、オノレ・ド・バルザックやジェーン・オースティンを引き合いに出すなどして、経済学的な内容を読みやすくしようと努力してはいるが、ドイツ語の翻訳版で800ページを超えるほど分厚く〔訳注:日本語版では728ページ〕、グラフやデータや方程式に満ちた内容は、一見したところベストセラーになるとは思えない。

注1 Diemer, M. A., Mistry, R. S., Wadsworth, M. E., Lopez, I. & Reimers, F. (2013). Best practices in conceptualizing and measuring social class in psychological research.Analyses of Social Issues and Public Policy, 13(1), 77ー113
注2 Piketty, Th. (2014). Capital in the Twenty-First Century. Cambridge, MA: The Belknap Press (deutsche Ausgabe: Das Kapital im 21. Jahrhundert. Muünchen: C. H. Beck 2014)