あなただけ、今だけ…
不信感を持たれつつも決断させる技
アミューズの注意喚起からもわかるように、にせものスカウトは疑われることを前提に策を練っている。逆に言えば、若者が相手に不信感を持っても、それを払拭するだけの術を身につけているのだ。
1、「特別感」を醸し出す
「通常DMでのスカウトはありませんが、あなたは特別」「一般には公開されていない、すでにデビューしている人だけが参加できるオーディションがあります。あなたは特別に参加できるので、このチャンスを逃さないで」など、「あなただけ」や「今だけ」を謳う。ターゲットの自尊心をくすぐりつつ、決断を急かす。
2、断れない雰囲気を作る
街中で声をかけた場合は「Instagramのアカウントだけ教えて」、SNSの場合は「仕事の話なのでInstagramのアカウントではなくLINEを交換したい」など、最初はハードルの低い申し出を受け入れさせ、それを受け入れさせたことで、次のステップの心理的ハードルを下げる。LINEを交換すると「オーディションがあるので●●まで来てほしい」「登録料のために明後日までに●万円が必要」といった話に以降する。
街中でのスカウト当日に「登録料として5000円必要」などと言う場合もある。若者でも払えなくはない金額(騙されたと気づいても泣き寝入りする程度の額)を最初に提示して、支払うかどうかを見極める。
冒頭のアミューズが提示した例でもあった通り「信用してくれないならデビューできない」などと言い、疑うことに罪悪感を持たせて騙すケースもある。「こういう業界だから秘密のことも多い」「信用できないのは無理もないけれど、大手事務所ほどスカウトはこういうものだよ」など、あの手この手を使う。
3、「事務所」で会わない手口
大手事務所のスカウトを装いながら、実際の事務所オフィスで会うことはしない。また、大手事務所を装っていない場合でも、実在しない芸能事務所を騙ったり、「特別なスカウトなので事務所名はすぐには言えない」などと言ったりする。
このような場合、ホテルのラウンジや繁華街近くの喫茶店などで「面談」が行われる。「他のオーディションをやっているから今日は事務所を使えない」「時間がないので他の場所まで来てほしい」などと言った口実が使われる。
アミューズの具体例では名刺を渡さないケースが挙げられていたが、名刺らしきものをチラ見せして「次に会ってくれた際に正式に渡す」などと説明する場合もある。