
自動車に関する複合的なサービス(カーライフのトータルサポート)を行うプレミアグループは、2007年の創業からわずか10年で東証二部に上場(翌2018年12月に東証一部へ市場変更、現在はプライム市場へ移行)し、躍進を続けている。同グループのエンジンとなっているのが「人」だ。2020年には、グループ役職員を対象とした研修を企画・実施する会社として、株式会社VALUEを設立。「常に前向きに、一生懸命プロセスを積み上げることのできる、心豊かな人財を育成します」というMISSIONを掲げ、“人財”を輩出している。そのユニークな研修のひとつ“バリューミュージカル研修”は、なぜ、どのようにつくられたのか?(ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/菅沢健治)
*本編は、「【ミュージカル研修(前編)】入社3年目社員が、チームで物語を創り、歌って踊って、気づいたことは何か?」の続きです。
「強い、明るい、優しい」というバリューをもとに
入社3年目の社員が4~5人のチームとなって、ミュージカルを創作・発表する過程を通して、内省することを目的としたプレミアグループ株式会社(*1)の「バリューミュージカル研修」。この研修を、ミュージカルカンパニー「音楽座ミュージカル」(以下「音楽座」)と共同で企画・開発したプレミアグループ株式会社のグループ広報・教育部部長の田中真琴さんに話を聞いた。
そもそも、田中さんは、プレミアグループの人財育成にどのように関わってきたのか。
* プレミアグループ株式会社…所在地(本社)/東京都港区虎ノ門 業務内容/株式等の保有を通じた企業グループの統括・運営等 グループ会社/プレミア株式会社、プレミアワランティサービス株式会社、プレミアモビリティサービス株式会社、カープレミア株式会社
田中 プレミアグループは創業18年目の会社で、私は入社して14年になります。その間ずっと、人事部門で採用と教育に関わってきました。3年ほど前から広報の仕事にも携わり、2020年に立ち上げた、自社の研修を企画・実施する株式会社VALUEにも籍を置いています。「必要」と考えた研修があれば、企画案をまとめ、プレミアグループの代表(代表取締役社長・柴田洋一)を含めた人財本部と協議し、実施の判断をしています。
社員研修を内製化しているプレミアグループだが、研修を企画・実施するにあたって、田中さんが重視していることは何か?
田中 社員が身に付けるスキルはもちろん大切ですが、マインドや理念に重きを置いた研修を積極的につくっています。当社には、創業時から掲げる「強い、明るい、優しい」というバリューがあります。「強い」とは、「高い志を掲げ、何事にもチャレンジしていける企業・社員を目指します」、「明るい」とは、「常にプラス思考で取り組み、笑顔が絶えない企業・社員を目指します」、「優しい」とは、「利他の精神、感謝の気持ちを持った企業・社員を目指します」と定義づけています。これは、当社が大切にしている、社員が仕事をするうえでの価値観で、このバリューを浸透させる研修を階層別に行ったり、管理職を対象としたリーダーシップ研修などを行ったりしています。代表の柴田自身も研修の現場に赴き、社員たちに積極的に声をかけています。
今回の「バリューミュージカル研修」も、そのバリューを浸透させるための研修のひとつのようだが、“ミュージカル”を研修に取り入れようとした理由は何か?
田中 音楽座さんに出会う前は、私自身、ミュージカルを観たことがありませんでしたし、ミュージカルを研修に取り入れようとは考えてもいなかったのですが……当初、人事の勉強会での研修体験で、音楽座さんのチーフプロデューサー藤田(将範)さんが言った「肝心なものは目に見えない」という言葉に共感したことが最初のきっかけでした。当時、私は、「強い、明るい、優しい」というバリューにつながる人間力を、会社として育てていくには何をしたらいいだろうと模索していて、その言葉が胸に刺さりました。そうして、「音楽座さんと一緒に社員研修をつくれるのではないか?」と思ったのです。お互いの理念が重なり、表現の方法がたまたまミュージカルだったわけで、「一緒にやれないでしょうか?」と、私が藤田さんに打診しました。