昨年4月から、裁量労働制を適用するには本人の同意が必要に

カタリーナ「2024年4月以降、裁量労働制を適用するには、本人の同意を得る必要があるのよ。同意をしなかった場合に不利益取り扱いをしないことや同意撤回の手続きなど、労使協定に定める必要もある。そのあたりは大丈夫?」

水沼「そういうことは、ぜんぶ人事部に任せていますから…」

カタリーナ「いくら労使協定や就業規則を整えていても、現場のやり方に問題があれば、すべて台無しになってしまうことだってあるのよ。裁量労働制は特に注意が必要で、制度の内容をよく理解しないまま運用すれば、大きな問題になりかねないわ。他の一般社員と同じように管理しようとすること自体ナンセンスよ」

水沼「そんな……。じゃあ、私が悪いって言うんですか!?」

カタリーナ「あなたのような管理職こそ、労務管理の知識が必要ね。裁量労働制も適切に運用できれば、自由な働き方ができると希望する人もいる。定額働かせ放題なんて言われないように、理解を深めてしっかり運用してほしいわ」

<カタリーナ先生からのワンポイント・アドバイス>

●裁量労働制には、専門業務型と企画業務型の2種類がある。2024年4月以降、専門業務型裁量労働制を導入するには、本人の同意を得ることや同意しなかった場合に不利益取り扱いをしないことなど一定の事項を労使協定に定め、労働基準監督署へ協定届を届け出る必要がある。個別の労働契約や就業規則等も整備しなければならない。
 

●専門業務型裁量労働制は、業務の性質上、その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量に委ねる必要がある。業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして定められた20の業務の中から、対象となる業務等を労使協定で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使協定であらかじめ定めた時間(みなし労働時間)労働したものとみなす制度。


●専門型の対象業務と対象業務とは全く異なる業務(非対象業務)を混在して行う場合は、たとえ非対象業務が短時間であっても、それが予定されている場合は専門型を適用することはできない。


●みなし労働時間を設定するに当たっては、対象業務の内容ならびに適用労働者に適用される賃金・評価制度を考慮して適切な水準のものとなるようにし、適用労働者の相応の処遇を確保することが必要。


●裁量労働制においても労働安全衛生法第66条の8の3等により、労働時間の状況の把握が義務付けられており、いかなる時間帯にどの程度の時間、労務を提供し得る状態にあったかを把握する必要はある。

※本稿は一般企業にみられる相談事例を基にしたフィクションです。法律に基づく判断などについては、個々のケースによるため、各労働局など公的機関や専門家にご相談のうえ対応ください。

(社会保険労務士 佐佐木由美子)