裁量労働制に遅刻・早退は関係ない
カタリーナ「専門業務型裁量労働制は、業務の性質上、その遂行の方法を大幅に本人の裁量に委ねる必要がある。だから、業務の遂行の手段や時間配分の決定は使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして定められた20の業務に限定されているの。導入には労使協定や労基署への届出も必要だけど、対象業務は大丈夫?」
水沼「えぇ、うちは『ゲーム用ソフトウェアの創作の業務』で、問題ないはずです」
カタリーナ「対象業務の遂行手段や時間配分の決定など、会社が本人に具体的な指示をするのはNGよ」
水沼「そうは言っても、プロジェクトチームで開発業務は行っていますからね。ある程度は私の指示に従ってもらわないと困るんですよ。彼だけ出社時刻も遅いことが多いから、もっと早く来るようには伝えています。まぁ、その分遅くまで残って仕事はしていますが」
カタリーナ「裁量労働制に、遅刻も早退もないわ。『時間配分の決定』には、始業・終業時刻の決定も含まれているのよ。時間ルールを守る必要がある業務なら、裁量労働制には馴染まないでしょ。それに、あなたの管理の下でプロジェクトチームの業務遂行や時間配分を行っているなら、そもそも裁量労働制の対象にならないわ。もしかしたら、労使協定で定めたみなし労働時間も、実態とはかけ離れているんじゃない?」
水沼「それは……うちの『みなし労働時間』は1日9時間ですが、実際にはみんなもっと働いているかもしれません。もちろん1日1時間分の残業代は毎月定額で支払っていますよ。だから、問題ないでしょう?」
カタリーナ「その状態だと、部下が言っていた『定額働かせ放題』というのも、まんざらウソじゃなさそうね」
水沼「でも、彼の給与はもともと高く設定されているんですよ?」
カタリーナ「それは関係ないことよ。相応の処遇を確保することは当然でしょ。その調子じゃ、去年の改正も知らないようね?」