賃金水準にはもともと企業規模による格差があり、しかも伸び率でも格差があるのだから、企業規模による賃金格差は拡大した。大企業の賃金水準は中小零細企業の賃金水準を1とすると、18年1〜3月期には1.74だったが、24年1〜3月期には1.85に拡大した。

 以上はしばしば指摘されることだが、法人企業統計調査の数字によっても、それが裏づけられたことになる。

大企業は原価上昇の負担を
購入者に押し付けている

 企業規模による違いが発生するのはなぜか?

 以前からあった賃金水準の差は、「資本装備率(従業員1人当たりの固定資産額。固定資産とは、工場や機械など)」の差で説明できる。大企業では資本装備率が高いのに対して、中小零細企業では低いのだ。

 しかし、資本装備率は数年の間に大きく変化するわけではないので、ここ数年の賃金上昇率の差は、資本装備率によっては説明できない。

 そこで、従業員1人当たりの粗利益(売上高―原価)の推移を見ると、図表6-9に示すように、大企業で顕著に増加していることが分かる。2020年頃には400万円程度であったものが、2024年では500万円程度になっている。この間に、約2割増加したことになる。これは著しい増加だ。

 では、なぜ大企業の粗利益が増加したのか?

「34年ぶりの高賃上げ率」でも喜べないワケ、大企業がカネを巻き上げる「強欲インフレ」のメカニズム同書より転載