親子に説明をするキャリアウーマン写真はイメージです Photo:PIXTA

80代の親が50代の子の生活を支える「8050問題」など、高齢社会の日本において「高齢者と中年の親子」が直面している問題は多い。長生きの親よりも先に未婚の子が亡くなってしまい、相続人となった親が子の遺産を相続するケースも少なくない。その際、子の遺産が多ければ、高齢者の親は想定外の相続税の支払いに頭を抱えることもある。細々とした年金暮らしに相続税が直撃するおそれがあるのだ。そこで、本記事では子が先に亡くなった際に、親が抱える相続税の悩みと解決策を解説する。(税理士・岡野相続税理士法人 代表社員 岡野雄志)

未婚の子が先に亡くなった際に
親にのしかかる問題とは

 子や孫がいない独身の子どもが亡くなった場合、親が存命なら「相続人」になることはご存じだろうか。民法では法定相続人の順位が定められている。配偶者は常に相続人であり、その次に第1順位に「直系卑属(子や孫)」、第2順位に「直系尊属(親や祖父母)」、最後に第3順位の「兄弟姉妹」が該当する。相続権は第1順位に該当する人がいない場合は第2順位へ移る。そのため、独身の子に第1順位の子や孫がいない場合は、第2順位の親が相続人となるのだ。

 5年ごとに実施されている国勢調査の最新統計(2020年調査)による「配偶関係」および「世帯の状況」では、日本の未婚者数を調査しており、次のような結果となった。

(1)男性の未婚
2020年度の未婚者は約1854万4000人(15歳以上男性の34.6%)、2015年調査時は約1790万5000人であり、約63万9000人増加している。

(2)女性の未婚
2020年度の女性の未婚は約1424万6000人(15歳以上女性の24.8%)、2015年調査時には約1382万9000人であり、約41万6000人増加している。

 上記の結果から、未婚の子を持つ親も増えていると考えられる。また、結婚後に子を持たず、離婚や死別で配偶者がいなくなった子が親よりも先に亡くなった場合も、親が相続人となるため注意が必要だ。未婚の子が親よりも先に亡くなった場合、子の遺産が多いと親が相続税申告を行う必要がある。生前に子と同居していた場合は、子の財産状況を親も把握しているかもしれない。しかし、子と別居していた場合は、どのような財産を生前に形成していたのか把握していないケースも多い。

 加えて、子がすでに父母いずれかの財産を相続していた場合、高額の遺産をそのまま有している可能性も高くなる。もしも、子の遺産が高額であり相続税を納める必要があっても、親が年金生活者であったり現金を多く持たないケースでは、相続税の納付に苦しむおそれがあるのだ。相続税は原則として現金で納付する必要があり、納税額によっては高齢の親の生活を逼迫(ひっぱく)させる可能性もある。そして、相続税トラブルは納税資金に関することだけではない。