「知恵の流通の最適化」のためのサポート内容
院生・ポスドクの採用市場は好調なようだが、一人ひとりの研究テーマにぴったり当てはまる仕事はそれほど多くないだろう。また、企業の求人は専門分野によって“差”があるようだ。
山田 人材業界では機械系、電気系、情報系を「キデンジョウ」と呼び、これらの分野は、DX化が進む製造業やIT通信業から幅広い採用ニーズがあります。個々の研究テーマにかかわらず、「キデンジョウ」を専門とする人材にはオファーが殺到しています。一方、生物やライフサイエンス系などは院生の数に比べて、採用枠が限られています。食品メーカー、化粧品メーカーの研究職は、特に生物系の院生に人気ですが、高倍率になりがちです。
研究テーマや専攻する分野とダイレクトにマッチするのが難しい場合は、大学院での研究を通じて培った、課題設定・解決能力、データ分析能力、ロジカルシンキング、プロジェクト管理能力、語学力といったビジネスでも役立つ汎用的なスキル(トランスファブルスキル)を活かすことで、より幅広い業種、職種にアプローチすることが可能です。その証拠に、近年は、コンサルティングファーム、金融機関、フィンテック、特許事務所などが博士人材の採用に積極的です。M&Aに力を入れている某企業では、買収した子会社のCFOや経営企画のポジションで博士人材を求めています。
2006年に創業したアカリクは、院生にフォーカスしたキャリア支援を行っている。コーポレートミッションは「知恵の流通の最適化」に貢献していくこと――具体的にはどのようなサポートを行っているのだろうか?
山田 人材業界でもかなりニッチなこの分野において、当社は草分け的な存在です。
大学院生に提供しているサポートとしては、まず、ダイレクトリクルーティングがあります。自分の研究テーマ、研究内容やこれまでの経験を登録していただくと、その学生に興味を持った企業からスカウトメールが届きます。研究で忙しい院生のタイムパフォーマンスを上げることに役立つサポートです。
また、採用イベントを年間100回ほど実施しています。ITエンジニア職、半導体業界、製薬業界、博士人材を積極採用する企業……といったテーマを設定し、多ければ10社ほどの企業がイベントに参加します。現在はオンラインが中心ですが、対面の希望も多く、リアルでの開催を増やしていく予定です。さらに、専属のキャリアアドバイザーが求職者に付いて、One to Oneで求人情報の紹介から内定承諾までを伴走するサポートもあります。
多くのパターンは、ダイレクトリクルーティングで研究の合間にスカウトメールを確認し、興味を持った企業に応募するというもの。採用イベントは、短期集中で複数社を検討したい院生に向いています。一方、「就活に時間をかけたくない」「日程調整からメール対応まですべて代行してほしい」「企業選択の軸がまだよく分からない」といった人にはOne to Oneのサポートが適しています。
なお、当社では、こうした院生へのサポート以外に、大学におけるキャリア教育の支援や、文部科学省からの受託事業として、ジョブ型研究インターンシップの運営事務局を担っています。