ポジショニングマップを作れば
顧客がわかるという勘違い
――マーケティングの重要な要素には、「ポジショニング」(自社のプロダクトやサービスの立ち位置を決めること)もあります。実務におけるマーケティングプロセスを「Research→STP→Marketing
Mix→Implementation→Control」の5つのステップで表す場合、戦略的プロセスのSTP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)レベルと、戦術的プロセスのMM(マーケティング・ミックス)レベルで、ポジショニングの考え方に誤解が生じていると指摘しています。それはどういうことでしょうか。
これは、ちょっと実務経験者向けのマニアックな話題です。マーケティングプロセスは経営学者のフィリップ・コトラー教授が提唱し、世の中の実務で広く使われていますが、誤解されている部分もあります。本来は、STPレベルでセグメントを決めてその中で顧客ターゲットを絞り、そこで勝つためのポジショニングを明確にする必要があります。しかし実際は、MMレベルのPromotion(プロモーション・広告)におけるポジショニングが先行して、STPを不必要に狭く定義しているケースが多い。主従が逆転しているのです(図3参照)。
そのような価値観の下で、現場ではポジショニングマップばかり作る傾向があります。しかし、社内プレゼンの説明資料や議論のたたき台としてはいいのですが、全ての顧客が「先進的か日常的か」「情緒的か機能的か」といった単純な二軸で評価して買うことはまずありません。
実際、マスの平均値で考えたポジショニングマップを大雑把に作っても、ロイヤル顧客のトレンドと大きくずれているケースもあります。ポジショニングが決まったらマーケティングの方向性が決まったと思われがちですが、実は「こうなったらいいな」という、売る側のポジショニング願望でしかない場合がほとんどなのです。