この時点で債権者(会員)の賛成率は各社95%という圧倒的多数を確保していたが、債権額の賛成率は50%に達していなかった。足利銀行の賛成があれば50%を確実に超えて認可となる。「ここまでしたのだから、さすがに大丈夫だろう」と、やり切った気持ちでいた。
だが、ここで再び思いも寄らない事態が起きた。
翌日、足利銀行から1本の電話が入った。担当者からの緊急連絡だった。
「認可決定確定後の経営体制、内部調査委員会を設置することについては納得してもらった。しかし資本の問題、つまり出資者が福島一族の福島範治であるということが問題に上がっている。何とかならないだろうか」
今さら何ともしようがない。1日、2日で私に替わって誰が出資してくれるというのか。代表を辞任するだけでも痛恨の極みだった。その上、出資もするなというのか。
唇を噛みしめながら話を聞いた。ここまでかろうじて忍耐を重ね、自分なりに保っていた粘りの糸が切れそうだった。期限に追われている中で、焦燥感というより「もういいよ、好きにしてくれ」と投げやりになる寸前の自分がいた。
弁護士の唐突な一言
「私たちが出資しますか?」
今回の再生手続きにおいて、資本金については福島文雄名義の株式をすべて減資し、私が再出資する計画だった。監督委員の意見書でも「違法性はない」と記載され、否定もされなかった。民事再生する3社(編集部注/会員権販売会社は鹿沼カントリー倶楽部が吸収)の資本金の調達に向けて、さまざまな金融機関への相談から不動産ローン会社の活用、果ては親戚からの資金調達に至るまで、地道に準備を進めていた矢先のことだった。
足利銀行からの話を受けて、この日も弁護士チームと夜遅くまで議論を重ねた。終わりの見えない会議だった。
「副社長、親族以外で出資をお願いできる、信頼できる友人とか誰かいないの?」と川原先生に聞かれた。資本金が持つ性質や会社の支配構造、出資に伴う経営リスクを考えると、おいそれとは頼めない。また、買い戻す場面が訪れたときに簡単には応じてもらえないかもしれない。取締役会で株式譲渡制限をつけるという方法もあるが、そこまで頭が回らなかった。