「顔も見たくない」「いなくなってくれ」…社員からの「怪文書」を負債1400億円の経営者が長年持ち続けたワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

経営の危機に貧した鹿沼カントリー倶楽部を再建すべく、創業者の息子、福島範治は1998年、勤めていた銀行を辞めて後継者となった。しかし、徐々に経営が回復していた矢先、社長への怪文書が届く。経営への不満を綴った手紙に、福島氏がとった行動とは。※本稿は、福島範治『負債1400億円を背負った男の逆転人生 鹿沼カントリー倶楽部再生物語』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです。

「最悪の会社になった」
事務所入り口に怪文書

 虫の知らせだったのか。その日はなぜか朝早く目が覚めた。

 6時過ぎに鹿沼の本部事務所に着いた。もちろん一番乗りだった。2階の事務所につながる階段を駆け上がっていくと、ドアのシャッターに紙が貼ってあるのが見えた。「差し押さえ通知でも貼られたのだろうか」と嫌な予感がした。

 近づいてみると、それは「福島社長へ」という題名の文書だった。

 A3版の紙にワープロで書かれたその文書は、ガムテープで乱雑に貼られていた。一瞬、破り捨てようかと思ったが冷静さを取り戻し、きれいに剥がした。そしてシャッターを開けて事務所に入り、一番奥にある自分の座席で文書を読んだ。そこにはこう書かれていた。

「福島社長、わたしたちにどれだけ頑張れというのか。あなたが社長になってから最悪の会社になった。自己革新からマナー、セミナー、セミナー教育、教育、教育、教育、教育。手一杯の人数で仕事をしているのにずっうーとずっうーと何年も追われてばかり。残された人たちはいつも忙しくイライラ。あなたはそんな簡単なことも分からないのですか。この人が足りない時にのこのこ会議に出てきてコミットメントの進捗とか数値化だのいいかげんにしたらどうですか。