レースには、春節に全国放送のテレビ番組で音楽に合わせた群舞を披露し、中国のロボットブーム火付け役となった宇樹科技(Unitree)製の「選手」も参加していた。しかし、スタート直後に転倒。伴走者に支えられて立ち上がり、観客たちに手を振る「余裕」も見せたものの、途中退場を余儀なくされた。
ブームの中心にいる宇樹科技は最近、バック転などアクロバティックな動きをするロボット映像を次々と公開して話題を集めているが、ランニング機能については意外な盲点だったようだ。同社はレース後、今回の「参戦」主体は宇樹科技ではなく、同社製ロボットを所有する顧客が改造して参加したものだとする声明を発表し、暗に顧客側の「調整不足」を指摘するような姿勢を見せた。

このマラソン大会は、ハプニングも含めて各メディアで大々的に報道され、週末の話題を席巻した。特に上位入賞したメーカーについては詳細な報道がなされ、今後のロボット事業展開への抱負も語られた。天工Ultraの開発者は「今後量産すれば価格はお手頃価格の乗用車並みになる」と展望を語り、2位に入った松延動力(Noetix Robotics)は参加した「N2」ロボットをオークションにかけ、5万6806元(約110万円)で落札されたという。
また、小型ロボットが中国メーカー産の子供用シューズを履いてレースに出場したことで、メディアは「ロボットが消費を牽引するかも」と期待を煽り、メーカー側もこれを積極的に宣伝に活用する意向を示した。
上述の通り、優勝した天工Ultraのタイムは2時間40分42秒。一方で、同じコースを走った人間選手の記録は1時間2分。世界トップの男性選手ならハーフマラソンは1時間を切り、2分40秒/kmであることを考えると、天工Ultraの7分37秒/kmというタイムはまだ人間には遠く及ばない。そのため「ロボットは人間に勝てなかった」というタイトルで報道したメディアもあった。
ただ、スマホ画面をほぼ埋め尽くすほどの熱狂的な「世界初ロボットマラソン大会」報道に対し、こんな根本的な疑問の声も上がった。
「なぜ、ロボットが二足歩行しなければならないのか?」