骨太の方針では実効性を確保するために数値目標が設定されています。それによれば2019年時点で923万人だったこの世代の正規職員・従業員の数を5年後の2024年に30万人増やすことを目標にしたのです。

 それで今回の会合で石破総理がおっしゃったのが、

「2019年に掲げた正規雇用者30万人増という目標に対し、正社員は(直近で)11万人」

 という成果でした。このアピールを聞くと国民は、

「ああ、目標は達成できなかったんだな」

 と思ってしまうわけです。

 実はこの結果、厚生労働省の目標設定にそもそも定義ミスがあったと私は捉えています。氷河期世代の大半は40代なのですが、この世代は社員から役員に登用される人数が多い世代です。日本の制度では役員になると社員ではなくなるので、統計上社員の数は減ります。

 ですから正社員増の目標としては2019年の正社員923万人ではなく、正社員および役員975万人がその後、どれだけ増えたかを計算すべきでした。

 実際はこの数字だと直近では31万人増えているそうですから、目標は実質的に達成されたわけです。このあたりのアピールが石破総理は下手で、同じようなことを説明しているにもかかわらず、目標設定のミスを語らないせいで関係ない数字をふたつ足して別の成果をアピールしているような誤解を受けてしまいます。

 では次に、この31万人が十分なのかどうかを考えてみます。

 実は就職氷河期世代の正社員率は彼らが20代の当時はバブル世代と比較してあきらかに低かったのですが、その後、中途採用が増え、時代的にも第二新卒や30代社員の雇用の機会が生まれていったことで、彼らが40代に入った段階では男女ともにバブル世代と氷河期世代の正社員率は同水準に改善されています。つまり過去25年間の政府の施策は着実に成果は上げてきたのです。

 先ほどの正社員および役員の975万人に、自営業と自ら進んで非正規を選んでいる労働者を加えると合計で1443万人になります。これは就職氷河期世代の85%です。この残りの人口の中に、不本意ながら非正規労働をしている層と政府が「ひきこもり」と考えている層が入ります。

 実はこの不本意非正規労働者と非労働力人口が過去5年間で39万人減ったのです。その反対に直近で正規労働者と役員の合計が31万人増えているのですから、関係者はやれることをすべてきちんとやって、数字を積み上げて、成果をきちんと出してきたのは間違いないでしょう。