この2つを両立するには十分な時間をかけなければならない。つまり、自分の裁量で仕事をするという思いを実現する速度を、著しく低下させなければならないのだ。

 お笑いコンビ、ブラックマヨネーズの吉田敬が「これを無責任と言っている人間って、ほんまによっぽどの社畜でしょうね。もうなんにも自分で決めることができへん」とコメントしているのは、自分の裁量を放棄して、ひたすら組織への責任を果たすことに執着したビジネスパーソンを的確に表現している。

日本企業も芸能界も
サバティカルを導入したらいい

 責任を果たすことと自分の裁量を両立する速度を上げるためには、「コアのこの業務だけは全うして休暇に入ります」というように、責任を果たす範囲を限定するか、「引き継ぎだけはしっかりとやります」というように、責任を果たすプロセスを特定する方法がある。

 嵐は、2019年12月まで続く20周年記念ツアーをやり遂げ、さらにその1年後に活動休止時期を設定した。これは、ファンへの責任を果たすことと、自分たちの裁量の思いを両立させるために考えた方法だろう。しかし、1年半も検討し、さらに発表後から活動休止まで2年間という期間の長さは、十分過ぎるくらいだ。

 久米宏さんが先駆けだと私は記憶しているが、看板ニュースキャスターが夏休みで一定期間不在になり、他のキャスターがその期間務めることは、今日ではよく行われるようになった。7年に1度、1年間、教員が教育業務から離れて研究休暇をとるサバティカル制度を用いている大学もある。それほど長い休暇設定ではないが、サバティカル休暇を取り入れている企業も出始めている。

 もちろん、嵐は5人そろって嵐だということは十分承知した上で申し上げるが、例えば、「この2カ月間は大野智が充電期間ですので出演しません」、「来年1年は櫻井翔がサバティカルに入ります」という案内が数カ月前にあって、それをファンが当然のものとして受け入れるようなことが、芸能界でもあってよいのではないか。

 今回の活動休止期間を終えた後、再集結すれば、メンバーおのおのが驚くほど進化を遂げていたりパワーアップしていたりするかもしれない。ファンに「活動休止してよかった」と思わせるようなパフォーマンスを発揮するのではないかと、今から楽しみでならない。