フィクションの世界の
ハチャメチャなロボットたち

 さて、「役に立たないロボット」とは具体的に、どんなものが存在するのか。まずは漫画をはじめとするフィクションの世界から概観してみよう。

 学生時代にサークルの部室で読んだ『究極超人あ~る』(ゆうきまさみ)の主人公「R・田中一郎」は、自分の身体を炊飯器につないでご飯を炊いてみたり、頭突きで壁に釘を打ち込んでみたり、自らの脚で自転車を漕いで新幹線並みのスピードで東京から京都まで移動してみたり、彼からは超人的なポジションでギャグを担当するロボットの立ち位置が浮かび上がってくる。

『Dr.スランプ』(鳥山明)の「アラレちゃん」も、キーンっと走っていってパトカーに衝突して破壊したり、パンチで地球を割ったりと、ハチャメチャだ。

 漫画の世界では「人間には絶対できないこと」をできるキャラクターを描くために、「ロボット」という存在が重宝されている(ロボットだとしても非現実的な描写ばかりだが)。

 2010年代以降の漫画では、『フルチャージ!!家電ちゃん』(こんちき)や『ぽんこつポン子』(矢寺圭太)など、“萌え”系の要素が入った作品が目立つ。生活を助ける家電の機能と、コミュニケーション能力を持つメイド(というより美少女)の外見をしたおっちょこちょいなロボットは、男性読者たちの一種の「幻想」を絵にしたものなのだろうか。

 これは確かに、ロボット工学とは一線を画すロボット文化だ。

ダメなロボットが
漫画に登場する理由

 そうかと思えば、『魁!!クロマティ高校』(野中英次)の「メカ沢新一」や、『21エモン』(藤子・F・不二雄)の芋掘りロボットの「ゴンスケ」、ちょっと古いところでは『がんばれロボコン』のように、「役に立たなそうな見た目」の王道を行くロボットもいる。

『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(秋本治)では、警視庁開発の「4号乙型」なるロボットが派出所に派遣され、「両さん」に「丸出ダメ太郎」と命名されていた。